螺旋階段

 女性に連れられてやってきたのは、村のはずれにある非常に大きな螺旋階段だ。

 見上げる限りどこまでも渦巻いていく階段には終わりがあるのかさえ分からない。

 また、半透明な階段は光に照らされることで淡い虹色に輝いており、確かに天国への階段と呼ぶのに相応しい姿をしていた。

「二人でここを上って。そうしたら天国に行けるよ」

「ほんとう? やったぁ! でも、どうしていままでないしょにしてたの?」

 螺旋階段を用いた成仏の提案は女性が急遽思い付いた苦肉の策だった。

 それ故に、少女を連れてきたのは今日が初めてだ。

 無邪気に問う少女の鋭い指摘に一瞬だけ虚を突かれて固まった女性だったが、すぐに立て直すと人差し指を立て、

「この階段は、二人以上じゃないと上れないから」

 と、もっともらしい表情で述べた。

 納得顔で階段を眺める少女に安堵のため息を吐き、今度は、私も本当に成仏させられるかも! と、不安そうな表情を浮かべている金森を手招きをする。

「な、なによ……」

 一応は友好的だが突然に胸を揉んだりしてくる謎の人外である。

 金森は女性を警戒しているらしく、片腕で胸を隠し、もう片手では即座に反撃できるよう握りこぶしを作ってジリジリと女性に近づいた。

 女性を睨みつける表情は険しい。

「そんなに警戒しないでよ~。ほら、隠してないで堂々と可愛いちっぱいを見せ……じゃなかった、お耳を貸して」

 ニコニコーッと笑う女性に金森は柄悪く舌打ちをすると渋々、彼女の方へ寄っていった。

 それからゴニョゴニョといくつか言葉を耳打ちされる。

「……ってことなんだ。ちょっと注意事項が多いけど、守れる?」

「た、多分、分かったわ」

 金森の返事はギクシャクとしていて頼りがいがない。

 女性は苦笑を溢すと階段を上り始める二人へ、

「いってらっしゃ~い」

 と、柔らかく手を振った。

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