第21話 1e-23mの示すもの
世界を形づくるあらゆる物質の根源から宇宙をm(メートル)で表すとこの値が始まりに近いものとして妥当なのでしょうか。量子力学の領域は凡才な自分には似合わない分野ですが、心霊に興味をもった頃に「霊界は10の-23乗に存在する」と何かの本に書いてあったことを思い出します。それが“何”をいっているのかさっぱり分かりませんでした。
幽霊が壁を通り抜けられるのは、その物質(個体)と同じ「振動数」を持っているから共鳴してくぐり抜けることが出来るといっていた意見もありましたが、その場合、壁を作っている分子の中の原子同士の結合パターンと幽霊の原子同士の結合パターンが食い違っていたら、同じ振動数であってもぶつかり合ってくぐり抜けるのは不可能ではないのかと素人の浅はかな知恵が働いたのを思い出します。
量子力学なる分野で人間の発見している最小の大きさ(=長さ)をm「メートル」基準で説明した場合、前者の10の-23乗m(=1e-23m)とは、1垓(がい)分の1m=1000京(けい)分の1m以下の大きさ=分子を構成する原子の中心にある原子核を構成している陽子・中性子・電子より遥かに小さな“素粒子のクォークやニュートリノ”クラス(人間が知り得る物質を構成する最小サイズ)をいっているようです。
もはやこのサイズになると、人間が普通に日々生活する中で身体のみならず、地球さえも気づくことなくすり抜けていっているのです。あまりに小さいため何も感じませんし、地球にも損傷は無いのです。そのクラスの素粒子と幽霊の存在する世界が同じ次元と言ってのけた意見には感服いたします。が、正しいかどうかは謎です。
背中合わせの世界の10の23乗m(=1e23m)はといいますと、1000垓m=100億光年=太陽系のある“天の川銀河を越え他の銀河も浮かぶ暗黒の“宇宙空間”を指し示しています。
いずれにせよ世界を構成している値のひとつに違いないと思われますが、その値が示しているものは人間と幽霊がお互いにシンクロしてもおかしくはない環境に置かれているということにでもなるのでしょうか。
ここで数字の“位”を表す呼び名が登場しましたが、日本で数字の位に使われているのは、「大数の命数法」と呼ばれているもので江戸時代の数学者、吉田光由(よしだみつよし)が著した塵劫記(じんこうき)でインドと中国から渡来した呼称を整理したものが使われています。古代インドの仏教とヒンドゥー教由来のもの、古代中国で使用された漢字によるものなどが命数法の元となっています。
10の0乗が一、10の1乗が十、10の2乗が百となり、それから順に千、万、億、兆、京(けい)、垓(がい)、 秭(じょ)、穰(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、 正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、 無量大数(むりょうたいすう)と呼ばれる単位になります。
例えば、単位のひとつである“恒河沙”の示す意味はサンスクリット語で「ガンジス川(=恒河)の無数の砂」を表し、“不可思議”は仏の知恵はあまりにも深遠だから人間が議論してもたどり着くなど不可能という、それぞれ未知数の量を表しています。
ちなみに、華厳経には命数法とは別の単位が存在しています。洛叉(らくしゃ)と呼ばれる最小単位の10の5乗から始まり、不可説不可説転の10の37澗(かん)乗まであります。不可説不可説転とは1の後に0の数が 372183838819776444413065976878496
48128個つきます。命数法に置き換えて表しますと、1に続く0の数は37澗2183溝8388穰1977秭6444垓4130京6597兆6878億4964万8千128個と表されます。
また、海外で大きい数字の順といえば、googleの名前の由来になっている数の単位のグーゴル (googol)=1グーゴル(one googolplex=10の100乗のこと)を始めとし、10の10乗の100乗(10 googol)=googolplex、10の10乗の10乗の100乗を(10googolplex)
=googolplexplexと呼び、ここですでに華厳経のいう“不可説不可説転を超える数値”になりますが、その上がスキューズ数(Skewesnumber)で、最大がグラハム数(Graham's number) ということになっているようです。
また、逆に日本の小さいほうの単位というと、10の-1乗から始まり、10のマイナス24乗まであります。順に追っていくと、10の-1乗の呼び名が分(ぶ)もしくは割(わり)から始まり、10の-2乗が厘(りん)、10の-3乗が毛(もう)という具合で、糸(し)、惚(こつ)、微(び)、繊(せん)、沙(しゃ)、塵(じん)、埃(あい)、渺(びょう)、漠(ばく)、模糊(もこ)、逡巡(しゅんじゅん)、須臾(しゅゆ)、瞬息(しゅんそく)、弾指(だんし)、刹那(せつな)、六徳(りっとく)、虚空(こくう)、清浄(せいじょう)、阿頼耶(あらや)の順で続き、10の-23乗が阿摩羅(あまら)、10の-24乗が涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)となっています。
ここで気づかれたと思いますが、10の-23乗を阿摩羅といっていますが、“アマラ”とはヒンドゥー語で“不死”を意味します。人間の肉体は滅びても魂は永遠に生き続けるという観点から、やはり霊界とは切れない何かがそこにあるのでしょうか。
最後に行きつく“位”は広大な宇宙を示す“∞”であり、メビウスの帯に似たそれは表裏一体の10の-23乗と10の23乗を行ったり来たりしているのかも知れません。
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