第6話 ドルイドのスペシャルな薬草

 今から2200年以上前に現代のヨーロッパ中部で活動していたケルト民族。その中でも頭脳と身体能力の優れた祭司階級のエリート、ドルイド(女性形はドルイダス)が利用し、特に気を使う薬草があります。(なかには魔術的要素も含む)

 一つ目は、『セラゴ』または『ヒカゲノカズラ』と呼ばれるもの。春から夏にかけて採取出来ますが、採取のしかたが大事で「必ず右手を白衣の左袖に通して、そのまま右手で左袖ごと採取」しなければなりません。

石松子(セキショウシ)と呼ばれる長さ2~3cmほどの大きな胞子嚢(ほうしのう)があり、胞子をナシの受粉増量剤にしたり、線香花火の混ぜ物や記憶強化剤、丸薬の湿気除けに混ぜて使われました。胞子の微粒子が湿気をはね返し吸収しないことが利点で、傷の血止めとしても使われました。

 二つ目は、『ハイハマボッス』または『ヤチハコベ』と呼ばれるもの。4月~5月の春に採取出来ますが、採取のしかたがやはり大事で「必ず左手で採取」しなければなりません。

出来るだけ生で利用します。全草20gを1日量として煎じて飲むことで、胃弱・脚気・催乳などに効能があります。

 三つ目は、『ヤドリギ』と呼ばれるもの。中でも樫(オーク)の木に生えるヤドリギが希少で「パナケア」と呼ばれ、最も神聖視されています。冬の間に採取しますが、素手で触らず手袋をして採取しなければなりません。

 パナケアは魔術的に万能な毒物の中和・解毒剤として利用されるほか、煎じて服用すれば不妊の動物に子が授かるといわれています。

 また、パナケア以外のヤドリギの枝や葉を乾燥させたものを漢方では桑寄生(ソウキセイ)と呼んでいて、煎じて飲むと、血圧を下げ、利尿、頭痛の緩和、リウマチ、神経痛、婦人の胎動不安、産後の乳汁不足などに効果があるとされ、セイヨウヤドリギエキスは高血圧、動悸や頻脈に使用されています。

 基本的にドルイドたちは上記の薬草を神聖で大切にしていましたので、直接素手で採取することはなかったようです。

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