第88話 呼ばれた!
神様に呼ばれて神社にお参りしたって話は、スピ系の界隈では、結構耳にする話です。
反対に、呼ばれないといけない神社ってのもあります。これはつい最近、私も体験しました。関東地方の山中にある某神社なんですが、参拝の計画をしても、外せない他の予定が入ったり、天候が悪くなったり、行く直前に体調を崩したりと、不思議な位に辿り着けないのです。
漸く参拝出来たのは、奥宮への参道が冬季閉山となる一週間程前でした。この日は何故か全てがスムーズに進み、道路状況も問題無く、込むことで噂の神社の駐車場もすんなり入れましたし。
漸く、参拝のお許しが出たのだと実感しました。
この時、奥宮で毎月欠かさず参拝に来られている話されている方がいらっしゃいました。志が違うんでしょうね。
其れともう一つ。
明らかに呼ばれたと感じた事がありました。
これもまた、関東地方の某県にある神社なんですが、初めて参拝した次の日、何かを忘れている妙な感覚に捉われる様になったんです。
それも、前日に参拝した神社に。何か物を忘れて来たとか、落とし物をして来たとかいう訳でもないのにです。
とにかく、いてもたってもその神社の事が気になって仕方が無いのですよ。
その神社は強烈なパワーを秘めていました。鳥居をくぐると、明らかに空気が違うんです。
それ故に、そのスピリチュアルな魅力に翻弄されてしまったのかと思えば、そうではないと心の中で何かが訴えている。
何故だか分からないが杉にでも行かなければならない――参拝したいという気持ちが日に日に増幅し、抑えきれなくなってきたんです。
次の休みの日、私は再びその神社に向かいました。
この時も、朝早くから目覚め、支度も道路状況も順調で、駐車場も比較近い所を確保出来ました。
社務所の前を通り、鳥居をくぐると、その前の週に味わった感動が蘇ってきます。
杉並木の参道を進み、拝殿で参拝を済ませます。
でも、まだ意識の中のモヤモヤ感は治まりません。
何かを忘れている。
其れはまだ解決していないんです。
ここからは、山中の奥宮と山頂の御神体を参拝するのに山道の参道を進まなければなりません。
表参道を進み、しめ縄の張られた入り口で一礼します。
と、其の時、視界の右端に、何かを捉えました。
祠です。
拝殿横の控室? の裏手に、小さな祠が二つお祀りされているのに気付いたんです。
もしかして。
私を、呼んでいたのは・・・。
その祠の元に足早に歩みを進める。
祠の前に立った刹那、私は息を呑んだ。
ここだ。
ここだったんだ。
意識の中にわだかまっていた、何かを忘れていた感覚。
その欠けたピースが、ぴったりとはまった感じがした。
私は感慨深げにその祠を見つめました。
祠にお祀りされていたのは、八大竜王神様と不動明王様でした。
どちらも私が心のよりどころにしている神仏です。
私はその祠の前で頭を下げ、合掌しました。
途端に、頭を上に引き上げるような不思議な感覚に捉われました。
頭と言うよりも、意識そのものをと言った方が正しいかもです。
私の悟りが正しかったと裏付けるかのように、心地良い気の流れが心身を満たしていきます。
その日から、私がこの神社に参拝に訪れた際、奥宮に行く前に、必ずこの二つの祠に御参りする様になったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます