どうやら俺は【猫吸い】すると最強になれるらしい~飼い猫キメてダンジョン無双~

オーミヤビ

第1話 プロローグ


 100年以上前。

 世界には大きな混沌が渦巻いた。


 異界迷宮ダンジョンと呼ばれる領域が世界各地で発生し、当時確認されていた生物とは全く異なるような化け物が地上へ出現。


 炎を吐いたり、ビルよりも巨大だったり、すでに生命活動をしていなかったり。

 かつて空想で語られていた存在が突如として飛び出し、人々はそれらを【モンスター】と呼んで恐れた。


 技術を結集させた兵器でさえ太刀打ちできず、世界は安寧の世から一転、恐怖のどん底へと突き落とされる───


 ことはなかった。

 神は見捨てなかった、ということか…あるいは帳尻合わせともいうべきか。


 ダンジョンの出現によって、地上に生息していた生物にも大きな変化が生じた。


 身体能力、生命力が著しく向上し、当時ではありえないような動きが可能となった。中にはモンスターと同じように規格外の能力を獲得するモノも登場した。


 そしてそれは、人類も例外ではない。


 翼が生えたり、一振りで山を破壊する腕力を持ったり……後に【具現者フィクショナー】と呼ばれる者たちが登場。


 その尋常ではないフィジカルと特殊能力をもって、彼らは次々とダンジョンを攻略していった。

 攻略の中でダンジョンには金品財宝や高価値のものが眠っていることが発覚し、フィクショナーは権力や利権を獲得。


 やがて持たざる者たちは、持つものである者たちに大きな尊敬と畏怖を持つようになった。


 以上のようにして。

 世界は具現者が主導するようになり、まさにフィクショナー、そしてダンジョンが中心となっていく。


 この大きな転換のことを───




***




「───魔渡まわたり、答えろ」


「へェっ?」


 生ぬるいまどろみの沼に居た俺は、突然名前が呼ばれることで勢い良く引っ張り出される。


 えぇっと、なんの話だ?

 ってかなんの授業だっけ…?


 弾かれるように前方の黒板に目を向け、ヒントを探ろうとするが頭に入ってこない。

 半ばパニック状態になろうとしていた、そんな折に。


「…っ?」


 ちょいちょいと腕のあたりを突かれ、俺は隣を見る。

 そこには呆れたように笑みを見せながらも、手元のノートを指し示すように叩くアイツの姿が。


「…山口、お前ぇ…っ!」


 友人、山口がなんと答えを教えてくれているではないか。


 心の友よ、と言いたくなるのを我慢して、俺は意気揚々と立ち上がり、ノートに示された単語を答える。


「はいっ、『アダマント』ですっ!!───ぐァ」


 回答のあと間髪入れず、というか同時に、俺の額は強い衝撃を喰らった。

 不意打ちのこともあって、俺はぐったりと椅子にもたれかかる。


「…いつ、俺の授業が理科目になったんだよ」


 ワナワナと怒る様に言う先生と、どっと笑い声をあげるクラスメートたち。

 

(くそう、山口。絶対許さねぇ…)


 心の友から一転、憎むべき敵となったアイツに恨み節を毒吐いてから、俺の意識はあっさりと手放された。



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