おとぎロワイヤル
みさと
始まり:Nothing seek,Nothing find
拝啓 イギリスでは雪が溶け、春が目覚めるころでしょうか。
私とあなたの出会いは、別段奇妙なことではなかったと思います。
多くの人々は、私たちを『師匠と弟子』と例えていましたが、私が貴方に教えたことは、基本的な世界史と文化史、そして『はじまりの物語』について。
本当に、ほんの僅かだったと思います。
今の貴方を形作っている知識の多くは、私の功績ではありません。
貴方自身の研鑽と努力の賜物です。
これからも、貴方が大きく羽ばたくことを願っています。
私は今、日本という国にいます。
そこで、最後の時を過ごしています。
私の命がすでに尽きようとしていることは、風の便りでお知りになられてると思います。
私のことを探すために随分と苦労していること、お伺いしています。
今まで一つの連絡もしなかったこと、大変申し訳ありません。
これは、私自身が望んだ結末なので、どうか悲しんだり、負い目を感じたりしないでください。
全ては私が、未熟で、愚かで、軟弱な『テラー』だった、それだけです。
さて、今回手紙を綴ったのは昔話や懺悔をしたかったからではありません。
貴方に、お願いをしたいことがあるのです。
この手紙を受け取りましたら、どうか『日本』の『吹山市』にある『飯坂書店』という本屋を訪ねて頂けませんでしょうか。
そこで貴方は出会うと思います。
我々『ペンクラブ』が探している『はじまりの物語』に。
どうか。
どうか。
この愚劣な老人の、最後の願いを聞いて頂ければ幸いです。
貴方の未来に幸多からんことを。
セレーネ。
貴方が私の弟子であったこと、誇りに思います。
――望月ソフィー、最後の手紙より
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