第80話 離れた場所にいる彼のこと

一つ年下の彼氏・優斗

今年高校を卒業し、東京都内のある私立大学に進学していた。

【サークル勧誘のときに3x3かバスケサークル無いかなぁって思ってたらさ、

 ちょうど3x3チームの募集があったから行ったんだけどさぁ・・・】

【どうしたのさ?】

【単なるお遊びサークルだったんだわ。だから辞めた】

【へぇ・・・そうなの。で、どうするの?】

【もうちょっと探そうと思ってる】

【東京なら結構ありそうだしね】

【そうなんだよねぇ。とりま探してみますわ。また連絡するよ】


連絡するよとは言ったものの・・・

「美青は3x3と大学で忙しいし、あの街と東京では距離があり過ぎるし・・・

 やっぱ会えないのは辛いなぁ」


大学での講義の毎日。

学費は親が出してくれるものの、生活費は一切出さない。

だからバイトで稼がなくてはならなかったし、そういう約束で上京したわけだし。

「あー、バスケやりたいなぁ・・・」

大学とバイトの掛け持ちでは好きなバスケをやる事さえできない。


悶々と無為に日々を過ごしていた優斗。


そんなある日のバイトが終わり。

「優斗くん、大学どこ?」

「O大学です」

「そうなの?私もそこなのよ」

同じ大学に通うバイト仲間の中野レイナは優斗よりも1年先輩にあたる女子学生だ。

日米ハーフらしく父方がアメリカ人、母が日本人だという大学内でも評判の美人学生

「このあと時間ある?」

「ええ」

「じゃあ、ちょっと付き合ってよ」

バイト帰りにレイナ先輩に誘われて近所の居酒屋へ。


「そうなんだ、優斗くん彼女いるんだ」

「ええ」

「いいなぁ優斗くんみたいな素敵な子が彼氏だなんて、その彼女さんどんな人?」

「誰にでも優しくて、気配りが上手な子です」

「理想的な女性だなぁ・・・一度見てみたいな」

美青みたいな女性は二度と、自分の前には現れないだろうなぁと思いつつ・・・

「でもその彼女さんと会う機会はあるの?あるなら私も一緒に・・・」

「いやほとんどないです、LINEだけのやり取りしか出来てないです。 

 夏には帰省するしその時には合えるかな?って感じです」

そういう時にしか美青と会うことが出来ないけど、この人を連れてはいけない。


「それはそうと優斗くんってなにかスポーツやってるの?」

「あ、バスケやってました」

「そうなの?私もやってるのよ。3x3だけど一緒にやらない?」

やりたい気持ちはあるのだが・・・

「じゃあ明日体育館に来てくれる?」

「え、あ、はぁ」


次の日、大学の体育館へ行くと、レイナ先輩が他の学生と一緒にプレイ中。

「来てくれたのね?ありがとう」

「みんな!紹介するよ!バイトの後輩で和田優斗くんだよ」

「よろしく!」

「おっす!たのむよ!」

レイナ先輩のチームは男子2名、女子2名からなる3x3チームなのだが

「まだ学内で同じ3x3サークルとしかゲームやってないんで、実力的には

 未知数なんですけどね、よろしく!」

キャプテンは2年の西尾圭太さん、同じく2年の佐藤真美さんとレイナ先輩、

1年の山本里音くんと俺の5名。

「きょうは顔見せってことで、できれば明日から来てくれないか?」

「解りました、講義とバイトも有るので毎日は無理ですけど、来れる日は来ます」

「それでいいよ、よろしくね」



【バイト先の先輩に誘われて学内の3x3チームに入ることにしたよ】

【良かったね、頑張ってね】

【なかなか会えなくてごめん、今度帰ったときはメシでもおごるよ】

【無理しなくていいよ、優斗は優斗らしく頑張ってね!応援してるよ】

いつも俺みたいなやつにでも、励ましてくれる美青。

やっぱ俺には美青しかいない。早く会いたいなぁと思う。



その美青はというと。


いよいよ来週に迫ったExcitement Tour'Sは、一発勝負のトーナメント戦だ。

「ウチのチームは第1シード。当たり前だけど気は抜くなよ。第2シードは

 あのRESULTだ。おそらく決勝戦で直接対決になるはずだからな」

ミーティングルームでメンバー全員が森井コーチの話を聞いている。

そこには当然のようにマネージャーの理沙とバイトの愛がいるし、

今日はチームオーナーの山本社長も来ている。


「勝ったら、みんなでどこか旅行に行こう!優勝記念ってことでさ」

「おー!」

「社長、その言葉忘れないでくださいよ!」

「大丈夫だよ、俺こう見えても物覚え良い方だからさ」


連日厳しい練習が続いていた。


「華、紗英。あなたたち大丈夫、相当無理しているように見えるけど」

「大丈夫です!問題ありません。絶対優勝しましょう!美青さん」

「わ、わかった・・・」(すごい!やる気満々だなぁ)


そして明日はExcitement Tour'Sという日に

山本社長が全員をミーティングルームに集めて。

「いよいよ明日だね、ぜひ頑張ってくれよ!来年以降も自分がオーナーをやるから

 キミたちは今までのゲームや練習の集大成として明日は、戦ってきてほしい!

 いいね!!」

「明日はExcitement Tour'SのSemi Finalからスタートよ、相手はG Floeだね、

 そしてFinalはあのRESULTだから油断するなよ、絶対勝つ!以上だ」



千聖はマネージャーの理沙と一緒に、事務所近くの美容院へ入って行った。



そして・・・

「おはようございます!」

「あっ!」

「どうしたの?」


ミーティングルームに入って来た千聖は金髪になっていた。

「なぜって今日優勝ですよね?だから金メダルにちなんで金髪にしてみました!」

「やるじゃん千聖!」


「千聖、似合ってるよ、その髪色」

「そう?ありがと!絶対優勝するんだし、その位の気合を入れないとね」

「カッコいいな千聖、私も頑張るよ」



「じゃあ今日は美青、有紗、華の3人で行く」

「ほかのメンバーはいつでも行ける様にUPしておいて」

「私はベンチ入りできないから、自分で考えてプレイするのよ」

Excitement Tour'Sではコーチはベンチ入りできないし、メンバーも基本4人まで。

ただバックアップ要員としてベンチ裏にが出来る。


Semi Final G Floeは順当に勝利。


その30分後に行われるFinalへむけてUp中のメンバー



「よし!いくぞ!絶対勝つ!」


第80話 完






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