第73話 よりを戻した二人

美青と会った次の日の学校、昼休みの廊下で。


「梨央・・・あのさ・・・」

「・・・もうボク関係ないから・・・」とそそくさと行ってしまった。


「よっ!優斗?どうしたんよ」

「うん・・・え・・・いやぁ、松谷のことなんだけど」

「ああ、あいつのこと?なんかねぇ昔に戻ったよね、やつ」

(やっぱりそうなんだなぁ・・・)

「完全に戻っちゃった。松谷くん、バスケやってのも意外だったし、

 栗田さんと付き合ってるってのもね、案外やるなぁって思ってたんだけどね」

「でもさぁ、なにか考えている感じよ」


梨央と話がしたい。謝りたい。元に戻りたい。ただそれだけなんだよな。

何か良い手は無いかなぁ・・・華に聞いてみるか?


「その話は聞いたよ梨央から」

「・・・それで・・・なんか言ってた?」

「泣いてた」

「泣いてた?」

「そう、優斗が初めてできた友達だったんだって。その優斗に・・・だからかな?」

「そっか、悪いことしたね華」

「ううん、それはいいんだ。でも私ともあまり口きいてくれないんだよねぇ」

華との関係にも影響を与えてしまったんだ・・・ホントにバカなことをしてしまった

「学校でもあまり回りと話しなくなっちゃったよ」

優斗は自分が責められているように感じていたが、それは自分が蒔いた種なのだ。


放課後、屋上へ上がる優斗

黒髪ボブの小柄な女子生徒が、複数の生徒に囲まれているのを見つけた。いじめ?


「やめてください!」

「おまえさぁ、ちょっと可愛いからって調子に乗ってんじゃねえよ!コラ!」

「そんなことありません!」

「てめえが、写真部の大田原と付き合ってんのは知ってるんだよ」

「付き合ってなんかいません!ただの友達です!」

「ははは!誰でもそう言うんだよな!」ボゴッ!大柄な女子が腹パンチ。

うっ・・・崩れ落ちる女子生徒


「おい!やめろ!」

「んだ?てめぇは」

「何が有ったか知らない。でもイジメはよくないぞ!」


「知らない奴は口出しすんなよな!」

といじめの主犯格らしい男子が殴り掛かかる。

「おい、キミ!こっちへ!」

小柄な女子をかばうように、イジメグループの替えに立ちはだかる優斗。

「女の前だからっていい顔したいのか?やっちまえ!」


ボゴッ!ドサッ・・・うっ・・・

「おい!何してる!」

バゴッ・・・ドッ・・・・ドサッ・・・瞬く間にいじめグループの連中を倒していく

助っ人が現れた。その顔を見て優斗は驚いた「梨央!」


「てめぇ憶えてろ!」いじめ連中は逃げて行った

「大丈夫か優斗!」

「梨央・・・すまん・・・お前にまた助けられたよ」

「いいよ、優斗はボクが学校で初めてできた友達だよ?助けるのは当たり前さ」

優斗は泣いていた。

「あの時はホントにごめん。悪いのは俺だよ」

「もういいよ、あれはチームのことを思ってのことだろ?知ってたよ」

「梨央・・・」

「あれからボクも元に戻りたいと思ってたけど、きっかけが無かったし、

 こういう性格だからなかなか言い出せなかったんだ」

「そっか・・・またバスケやらない?」

「うん、やりたい!って言いたいところなんだけどさ、受験勉強も大事だし」

「だよなぁ・・・」


するといじめられていた女子生徒が

「あの・・・」

「あっごめんね、ほったらかしにしてた」

「い、いえ、それはいいんです。バスケやってたんですか?お二人とも」

「そうだけど」

「私もやりたいんです」と話す女子生徒「でも・・・」

「でも?」

「私身長が160ないんです。なのでダメかなぁって思ってて」

「やりたいという気持ちがあれば身長はあまり関係ないかな」

「ホントですか?それならぜひ仲間に入れてもらえないですか?」

「うん、じゃあ明日の放課後でもいいから部室へ来てくれる?」

「はい!!!解りました」


「梨央、あの子誰?名前聞くの忘れちゃった」

「うーんボクも解らない・・・誰だろう???」



翌日の朝、

「おはよう華」

「お、おはよう・・・」

「どうした?」

「口きいてくれた・・・」

「なんだよ華、ボクたち付き合ってるんじゃないの?」

「え、ええ、そうなんだけど、ずっと様子がおかしかったから・・・」

「誰が?」

「梨央」

「ハハハ!そっかボクさ、優斗と仲直りしたんだよ」

「えっ!そうだったの?そっか、良かったね梨央」

「うん」それまでの暗い表情の華が、

 パッとまさに花が咲いたかのように明るくなっていた。



「バスケ続けるの?」

「そうだなぁ、受験もあるから一度チームは抜けようと思ってる」

「そっか、私も受験だけどずっと続けるつもりよ」

「華はすごいね、ボクはとても両方続けられないなぁ」

「あなたはあなた、わたしはわたし、でもずっと一緒だよ!梨央!」

「ありがと華」



あくる日の部室。

紗英、沙耶と大地、そして優斗、そして梨央もいた。

フットサルサークルのメンバーと一緒に、いつもの様にワイワイとやっている。

「昨日のドラマ見た?」

「見たよ!ガッキー可愛いよなぁ・・・」

「はぁ?あたしより可愛ってか?えっ大地?」

「い、いいやぁ…そんなことある訳ないじゃん、紗英の方が可愛いよ!」

「当ったり前じゃん!」となどと相変わらず、ゆるーい空気が流れる部室

そこへ一人の女子生徒が入ってくる。


「こんにちは」

「あっ、キミは昨日の?」

「昨日はありがとうございました」

「ううん、いいよそんなこと」


入ってきた女子生徒を見た沙耶は「あれ?ちぃじゃん?どうしたんよ?」

沙耶は知っているの?「だって同じクラスですから」

「あの、江田千聖です。仲間に入れてもらえませんか?」

「えっ?あなたがバスケって全く想像がつかないんですけど」


ちぃと呼ばれたその子は、160cmに満たない小柄な女子、

「わたしも3x3に興味がありまして、やってみたいなぁと思ってたんです

 この前、和田先輩がシュート練習しているのを見て、声かけたんです」


「そうなの?そう言えば昨日のアレはどうしたの?」

「昨日のアレ?」沙耶が聞くまでもなく、自分から話し出した。

写真部の大田原と付き合っていると噂されていたらしく、それがいじめの原因。

別につき合っているわけでもなんでもなく、教室を移動するときにたまたま

一緒だったのを勘違いされたようだ。

「それであんなことに?」

「はい」

「あの時、和田さんや松谷さんがいなかったら、わたし・・・」

「そんなことが有ったの?千聖。相談してくれればよかったのに」

「ありがとう、でもあまり他人を巻き込みたくないので」

「でもさぁ、ひどいことされてたじゃん、それでも?」

「い、いやぁ・・・」

隣で話を聞いていたフットサルサークルのメンバーが

「じゃあ、しばらく俺たちと一緒に行動すれば?大地も、和田先輩も松谷先輩も

 彼女を護衛しましょう!」

「えっ!そんなにしてもらっては・・・」

「大丈夫、人をイジメるとかマジ許せねぇからさ、なっみんなそうだろ?」

「そう、俺たちが居るから大丈夫だよ!」


その日からフットサルサークルのメンバーや優斗や梨央が交替しながら、

"護衛" につくことになり、彼女へのイジメは無くなった。

「千聖さぁ、最近表情が変わったよね?もしかして恋しちゃった?」

「いやぁそんなわけないですよ、わたしみたいな陰キャが。それよりあの人たちから

 目を付けられなくなったので、ホント助かってます」


第73話 完







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る