第20話 彼女のいい香り

ある日

「美青!おはよう!」

「おはよう美里」

「今日も超絶可愛いね美青!」


新学年になって美里と同じクラスになっていた


「そう言えばこの前、こんなの見つけたんだ」

と言って美里は自分のスマホのインスタ画面を見せて来たのだが・・・

あっ!これは・・・

「何気なく、インスタ見てたらさ、こんな画像があったのね」

それは、妹の理沙の友達である茉央ちゃんに "カットモデルになって下さい!” と

言われてやってあげたときのものだった。

そこに映っていたのは、完全なギャルメイクの俺、じゃなくて私だった。

金髪ポニーテールで、ちょっと派手めなメイクをした自分がセーラー服を着て

逆ピースをしているものだ。


「見つけたとき、あっ!美青だ!ってすぐ分かったよ」

「いやぁすまんすまん」

「なんで謝るの?十分可愛いと思うんだけど」

「そ、っそうかな・・・ははは」

「今度さ、この格好で登校したら?」

「ええ?これで?」

「そう、こんだけ似合う子って、そうそう見ないからさ」

だけど、うちの学校は私服登校はNGだったはずだ。

「今度って言っただけで、明日から毎日と言う事じゃないわ」

「あ、まぁ、そうだね」


そう言えば来月、5月には校外学習があったはずだなぁ。

「それよ、校外学習の時は制服も私服もOKだったでしょ?」

「その時って事か」

「ご名答!」


そしてその校外学習の日がやって来た。

ウチの学校では春と秋の年2回に校外学習っていう行事があって、

要は遠足に近いけど、この地域の事を学ぶとか農作業を実体験するとかいうもので

今回は、バスで1時間ほど走ったところに有る、県立美術館を見学なのだ。


「今日も絶対的にカワイイ美青!セーラー服とか似合い過ぎだね」

「そう言うあなたもメイド服がお似合いよ」

などと、どーでもいい会話をしつつ美術館に到着。


あまり絵画とか彫刻は興味がないので早めに外へ出てみると


「うわぁ~~~カワイイ!!!」

「チョーー可愛くない?」

「やばっ!可愛すぎ!!!!」

「ボクと付き合って!」

って美術館に来ていた人々からの歓声を浴びる私。


「やっぱさぁ、美青ってホント可愛いんだよ!周りの赤の他人が言うんだしね」

「うーん、これで良いんだろうか?」

「良いんだよ、これで。美青の彼女になれて私、ホントに嬉しい」

「そっ、そうですか・・・」やや引き気味の私


学校へ帰る時間になって、

「ねぇ美青、また隣に座っていい?」

「うん」

隣に座った美里からはいい香りがするんだ。柑橘系のというか、そんなの。

朝、美術館へ行くときは別の子が座ってたんだけど、その子もいい香りがしていた。

それにその子も、薄めではあるけどメイクしてたようだし、制服のジャケットだったけどスカートは違うものだったなぁ・・


俺、じゃなくて私もやっぱ、メイクの勉強しないとな。


第20話 完





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