第18話 ジョン王子の後悔

 リーテン王国へ戻ると、父上にめちゃくちゃ叱られた。

 だけど父上もアンカードとの関係を悪くする訳にはいかないようで、エイダ王女を追い出したりはできないようだった。


 というか、俺はステリア同様、アンカードとの友好の架け橋になってあげたのに、何でそんな叱られなきゃならないんだ?

 俺は褒められるべきはずだ。


 エイダ王女もなかなか図々しい性格で、父上が追い出せないと知ると、堂々と城に居座るようになり、使用人たちにわがままを言いまくっていた。



 エイダ王女はシェリーにはあまり気に入ってもらえなかったようで、どうやらシェリーから嫌がらせを受けているらしい。


 それも嫌がらせを受ける理由は、エイダ王女がシェリーのあってはならない秘密を知ってしまったかららしい。


 その秘密とは……なんと、シェリーが体内に悪魔を宿しているというのだ。

 どうやらエイダ王女は、シェリーが身体から悪魔を出して会話しているのを見てしまったらしい。



 そんな馬鹿な、と俺は最初信じなかった。

 だけど、シェリーのエイダ王女への意地悪はどんどんエスカレートしていっているらしく、エイダ王女がもう限界だと俺に泣きついてきた。



 俺は、そんな風に自分を頼ってくれるエイダ王女を可愛いと思うようになった。

 恋もしていた。



 だから俺は、彼女の願いを聞き入れて、シェリーを城から追放した。


 もしシェリーに泣いて許しを請われたら許してあげようと思ったけど、彼女はすぐに受け入れて出て行ってしまった。


 やっぱり悪魔を宿しているという噂は本当だったのか。

 そう思うと俺の心は酷く傷付いた。


⸺⸺


 あれ? と思い始めたのはその直後からだ。


 エイダ王女の態度が一変した。


 俺や父上にも上からくるようになり、どんどんと横柄おうへいになっていった。


 流石さすがの父上もエイダ王女を捕らえて、アンカードへ抗議すると言い出した。


 すると、エイダ王女の身体が真っ黒なモヤで包まれて、気付いたときには俺はその真っ黒なエイダ王女に首元にナイフを突きつけられていた。


 そして彼女はこう言った。

「このクズ王子を殺されたくなけりゃ、あんたら全員牢屋に入っておきな!」


 父上も母上も使用人も、みんな俺のために牢屋に入った。



 俺は、この時全てを悟った。


 本当に悪魔がいるのは、エイダ王女の方なんだ。


 父上のご忠告をちゃんと聞き入れていれば……俺がこんな馬鹿なことを考えずにシェリーにちゃんと俺の思いを伝えていれば、もう少しシェリーの気持ちに寄り添っていれば、こうはならなかったかもしれない。



 俺は、くだらない欲求で、家族も最愛の婚約者も、国も、全てを失った。


 今俺は、玉座の間にはしたなく座るエイダ王女に鎖で繋がれて、彼女の前で四つんいになり、彼女の足置きになっている。

 ちょっとでも動くとヒールのかかとでグリグリされる。



 こんなはずじゃなかったんだ、こんなはずじゃ……。


 俺はシェリーを追放してからもう何度目かも分からない涙を、今日もまた流した。

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