第16話 暗駆の帰還

 無事遠征も終わってクラウス隊が城に戻ると、私とクラウスは早々にヨゼフ国王陛下に呼び出された。


⸺⸺ステリア城 玉座の間⸺⸺


 私たちが玉座の間へ向かうと、ヨゼフ国王陛下にナターシャ王妃、そしてアルフォンス王子に、暗駆あんくの1人が集まっていた。


「あ、あなた暗駆の“にしき”ね? ってことは、何か情報が手に入ったのね!」

 私がそう言うと、黒尽くめの彼はサッとお辞儀をした。


「はっ。昨夜皆帰還致しました」


「そうだったの、お疲れ様」

 私がねぎらいの言葉をかけると、彼は深く一礼した。


 そして、ヨゼフ国王陛下が口を開く。

「遠征から帰って疲れておるところ申し訳ないが、状況が少々切迫しておるため、こうして招集をかけた訳だ」


「切迫……? それは一体……」

 と、クラウス。


「まずはアンカードに行ってもらった暗駆の情報だ。アンカード王国は……既に存在しておらん」


「何ですって!?」

「何だと!?」

 私とクラウスは同時に驚きの反応をする。


「アンカード王家は既に全員息絶えており、国民も誰もいないとのことだ」


「えっと、待って……。じゃぁ、私の会ったエイダ王女は……」


「やつは、エイダ王女の名をかたった全くの別人だ。アンカードで手に入れたエイダ王女の肖像画と、現在リーテン王国に滞在しているエイダ王女には全くの共通点がなかった。偽物であるとみてまず間違いない」


「そんな……!」


「では、アンカードに出入りしている商船と言うのは……」

 クラウスが問う。


「うむ。“ミラ神”という邪神を信仰するカルト集団、“ミラ教”の信者が出入りしているようだ」


「ミラ教……聞いたことないわ……」


「外の島、もしくは大陸から流れてきた宗教だ。シェリーだけではない、誰も知らんよ」


「じゃぁ、そのエイダ王女に成りすましている人も、そのミラ教の信者なの?」


「そうだ。どうやらミラ教の連中はジョン王子を懐柔してリーテン王国を乗っ取ろうとしているようなのだ」


「そんな……なら、早くリーテン国王にもこのことを知らせないと……」


「それがな……リーテン国王と王妃は、現在牢屋に幽閉されておるようなのだ」


「「!?」」

 私とクラウスはハッと息を呑む。


「切迫した状況というのはそういう事だ。急ぎ部隊を編成し、リーテン国王と王妃を救出しに向かう」


「はっ、すぐに部隊編成致します! 行くぞシェリー」

「ええ!」

 私とクラウスは急いで玉座の間を後にした。

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