バタフライ・エフェクト

五十嵐圭

第1章 運命と覚醒の宴

第0話 ビーフシチューは母の味

農場で遊んで家に帰ったのは夕方だった。


その日の晩御飯は「ビーフシチュー」だった。


朝、お母さんと約束したのだ。


「レイ、今日はビーフシチューにしましょう。」


「ビーフシチューってなーに?」


「うふふ、お肉を煮込んだ料理のことよ。」


「前に食べた、ヤギのミルク煮に似てるの?」


「そうね、似ているわ。でもきっともっと美味しいはずよ。」


「わーい!楽しみだなー!」


「少し仕込みに時間がかかるの。夕方まで外で遊んでいてね。」


「うん!わかった!!」


そう言って、僕は外に飛び出した。


一口、口に入れるととろけるような肉が何とも言えない味わいで、今まで食べてきたどの味よりもおいしかった。


こんなにも美味しいものを今まで口にしたことがなかった。


ソースの部分も肉に負けないくらい美味しい。二つが絡み合って一層濃厚な味わいだった。


その数日後、お母さんは死んだ。


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