俺はアイツの…ッ!!
俺は…大鷹椿が苦手だ。
いや、苦手になってしまったという方が正しい。
俺達は幼稚園の頃から一緒で、小学生の頃まではそれなりに仲が良く、数人のチームを作ってヒーローごっこなんかもしていたほどだ。
そしてアイツは俺の隣りで笑っていた。心の底から…笑っていたのだ。
しかしある日を堺に、アイツは俺の隣に来なくなった。笑顔も、何処か作ったような表情となっていた。
さらにはチームも解散、皆バラバラに…。
その原因を作ったのは、俺自身だ。
俺が…アイツから笑顔を奪ってしまったのだ…。
だからこそ!これ以上アイツから、何も奪わせない!アイツの未来は、絶対に奪わせない!!
なぜなら俺は…アイツのッ!!
「うがっ…。け…。…ごっ…けよ…。うご…けえぇぇぇーーーーーー!!!」
ミシミシと身体中から嫌な音が響き、動かない身体を無理やり動かした反動で全身に痛みが走る。
しかし今の俺にはどうでもよかった。
こんな痛みなど、大したことはない。
俺はただ、アイツを救えればそれで良かったから…。
(俺はアイツの…ッ!!)
グルッ!!
「……え?」
あるのは目の前の獲物の命を刈り取ることだけ…。
その本能に従い、略奪者は椿の新鮮な命を奪おうと、飛び掛かりながら後ろ脚を突き出し鋭く発達したシックルクローを椿に向ける。
椿は何が起きたのか理解できず、放心状態となってしまっていた。
しかしそんな椿に対し、容赦なく略奪者は椿の心臓に向けて鋭い鉤爪を突き立てる。
アイツの命が今まさに、奪われようとしていた。
「うぉおらあぁぁぁーーーーー!!!!」
だがその直前、気付けば俺は椿と略奪者の間に割って入り、略奪者の顔面へと横から拳でフルスイングをぶちかましていた。
メキメキッと鈍い音を鳴らせながら、略奪者の顔面に俺の拳がめり込んでいく。
略奪者自身も自分に一体何が起こったのか分からないと、白眼を見開き俺に視線を向けてきた。
だが俺はそんな事は気に留めず、腰を切りながら全体重を拳に乗せ、そのまま略奪者をぶっ飛ばした。
グルラッ!?
予想外の攻撃に略奪者は対応できず、身体が宙を舞い5メートルほど飛びアスファルトに叩きつけられる。
それと同時に、放心状態だった椿は力が抜けたように尻もちを付き、未だに拳を振り抜いた形を保っている俺を見続けた。
(俺はアイツのッ!ヒーローだッ!!)
○◆○◆○◆○◆○◆○
「ん?これは…?」
炎城がヴェロキラプトルと交戦しているのと同時刻。
とある秘密の場所では、例のペリップと呼ばれるヒョロガリ男が、見つめていたモニターの違和感に気が付き、その違和感を突き止める為にキーボードを叩き続けていた。
するとその行動が気になったのか、ペリップの後ろから青年の声が響いた。
「ペリップ、何かあったのかい?」
「いえ…特には…。ただ、渋谷周辺に微弱ながら反応があったような気がしただけです。多分気のせいですね。」
綺麗なスーツに身を包んだワタルと呼ばれる青年の指摘に、ペリップはハハハと笑いながら頭をかく。
確かにペリップが見たのは、モニターに映ったほんの一瞬の瞬きに過ぎないほどの小さな違和感だ。
ただの機械の故障と言われても仕方のないほどの…。
「もっ申し訳ありません。今は首都防衛が最優先ですよね。気にしないで下さい。」
ペリップは何も言わないワタルにおっかなびっくりしながら、再びモニターの監視を始めようとした。
しかしその時、難しい顔をしていたワタルが口を開く。
「ペリップ、君が見た違和感の場所。特定することは可能かい?」
「へ…?」
突然のことに、思考が止まったかのように固まってしまうペリップ。
そんな彼にワタルは少しばかり喝を入れるように強めの言葉を飛ばす。
「どうなんだい?」
「へ…あ、は!はい!特定出来ると思います!」
それに驚いたペリップは、あたふたしながら自分が見た違和感の場所を探そうと躍起になっていた。
そして指示を出した青年は、ペリップ越しから見えるモニターを再び難しそうな顔で…見続けていた。
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