仮面の英獣使い

TOBU虎

プロローグ

永久への願い

 暖かな日差しに照らされ、少女は目を覚ます。

 遠くの方で鳥のさえずりが聴こえてくる。

 今は朝なのだと、そう思った。

 そして自分が椅子いすに座り、机にもたれて寝ていたことも理解した。

 だが、なぜ自分が机にもたれて寝ていたのかが分からなかった。


 ここは何処なのだろう?


 少女は辺りを見回した。


 知らない部屋だ....。


 8じょうほどの広さに、木の机とシングルベット、小さな戸棚、クローゼットと、とても簡素な部屋だ。

 机とベッドの間に大きな窓があり、そこから朝の日差しをめい一杯いっぱい取り入れて、部屋中を照らしている。

 窓からはほんのり桃色が残る、青葉あおばをつけ始めた桜がのぞいていた。


 自分は何故なぜこんな所に居るのだろう?


 記憶を辿たどる。

 だがいくら辿たどっても思い出せなかった。

 ふと、机の正面の壁に目をやる。

 そこには大きめのコルクボードが掛けてあった。

 まっさらだった。

 いや、ボードの一番下に色紙いろがみを切り取った文字が、カラフルにえてある。


 『ずっと一緒だよ♡』


 頭の奥でズキリと痛みを感じた。

 すると、少女のほほをすーっと何かが流れる。


 涙だった。


 手の甲で必死ひっしき取るが、後から後から流れ続ける。

 何故悲しみが込み上げてくるのかが分からない....

 分からないことにすら悲しくなり、どうしようもなかった。


 しばらく泣きじゃくり、収まった頃には目が赤くれていた。

 すっと机のすみに目をやると、数十冊はあろうか、ノートがかさなっていた。


 日記だろうか?


 nameの所に自分の名前が書いてあったが、他は自分の物では無い物もある。

 少し躊躇ためらったが勇気を出し、少女はノートを手に取った。


 そして…まるで何かに導かれるように、すっとページを開いた…。


◆○◆○◆○◆


    『英雄記伝えいゆうきでん


               著 ???


 この物語は、世界のどんな記録きろくにも、世界の誰の記憶きおくにもない、この世界を救おうとした、英雄ヒーローたちの物語だ。


 ここに語ろう。


 私が体験したすべてを…。


 世界の真実を…。


 思い出すことが…できるように…。


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