温泉にはいるよ

一の八

温泉にはいるよ



僕は、いつも行く温泉がある。

お年寄りから若者まで様々な人が訪れる。

そこには、ショッピングモールも併設されているので子供を連れたお客さんも多く、

休日は、沢山の人で賑わいを見せている。



そんな便利さもあり、よく行っている。


そして、何よりも近いからだ。


いつもように友人とその温泉に向かった。


そこは、久しぶりに訪れたけど、

相変わらずという雰囲気であった。


受付を済ませる。


階段をおりていくと、温泉のマークのある暖簾が見える。


今日は、こっちか!



いつものようにロッカーで衣服を脱ぎ、

いざ!お風呂へと思っていたら


「最近の若い人は、競馬とかやるのかね?」


んっ?隣で椅子に腰掛けていたお爺さんに声を掛けられる


「いや〜どうだろう?僕は、やらないかな…

お爺さんは、やるの?」


「やっぱり、身体は鍛えておかないとダメだぞ。僕は、むかし、剣道と柔道で段を取ったことある。いい身体してるだろ!」


あれっ?競馬の話は?


「僕は、昭和6年生まれで戦争も経験してるだよ。その頃は、戦争の真っ只中だからね。自分の身は、自分で守らないといけない。むかしは、極道にも入っていた事もある。

だから、柔道や剣道で身体を鍛えていたんだよ。」


突然のお爺さんの人生経験の話になっているな。



「はぁ…」


「ちょっと手を握ってごらん!」


差し出された手を握った。


グイッ


思いっきりくるな。


グイッグイッ


「どう?今でも力あるでしょ!」

「あっ、すごいですね!」


グイッ


なぜかマッパのまま知らないお爺さんに手をグイッとされる。


なんだこれ?あまりにも滑稽すぎるな。


そんな事を思っていると、

横から常連のおじさんが通るのが見えた。


いつもよりも遅い時間に来るんだなと考えていると、


更衣室のロッカーを開けて、

着替えを始めた。



そのおじさんがサッとズボンを下ろすと…


んっ?


あれっ?


おじさんの息子が待ってましたと言わんばかりにあるではないか。



あれっ?


パンツは?



「あとね、嫁は、大事しないといけない。

いいね!これは、忘れてはいけないよ」



それよりも常連のおじさんがパンツが履いていなかったな。


そのことで頭に入ってこない。


常連おじさんのパンツと知らないお爺さんに挟まれるというカオスに苛まれながらも


マッパの友人と共にお風呂に向かって行くのであった…


「よく声掛けられるよな」

「だいたい、

ああいうお爺さんは、温泉にはいるよ」


あのオッサン。

ノーパンの常連だったのか…


温泉にはいるよ


パンツくらいはと、思いながら

湯気の中へと進んだ

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