魂の定点観測 - 遠い約束 -
ましさかはぶ子
1 遠い約束
花が咲く木の下で子どもが二人座っている。
夕空に光るふたつの月。
淡い光を帯びて空に浮かんでいる。
木には不思議な色の花が溢れる様に咲き誇っていた。
「ねえ、いつロケットに乗るの?」
「うん、僕は明日。」
「そうか、私はあさって。」
「どうして僕達は同じロケットじゃないんだろうね。」
「……、そうだね。」
「僕達また会えるかな。」
「……わかんない。」
「泣かないで、僕も泣いちゃう……。」
二人はお互いの手をそっと握った。
温かく柔らかい感触だ。
「……私、明日そっちのロケットにこっそり乗る。」
「そうする?」
「うん、絶対にそっちに乗る。」
「約束だね。」
「うん、約束。」
二人はふたつの月を見上げた。
「遠いねえ。」
「うん、遠いねぇ。」
ロケットはあの月を越えて彼方に行くのだ。
「あ、お母さんが呼んでる。僕行くよ。
約束、約束、忘れないでね。」
「うん、約束ね。絶対に行く。また明日ね。」
花が散る。
静かに。
その小さな約束は花しか知らない。
月はその影を映す。
だがその全ては今では消え去って何処にもない。
遠い彼方の約束だ。
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