第4話 カフェにて

明日のことを考え出すとキリキリと胃が痛みだす。


「どうした?」

「いえ、澤田様は甘いものがお好きなんですね」


「うん、だって甘いものって幸せな気分になるでしょ? 柊さんは甘いもの嫌いかな?」


「私は、嫌いではありませんが、あまり選択肢にはありません」


「そっか」

「ですが、作るのは好きなので…」

というと


「!?」

驚いた表情で

「じゃ、明日から作ってよ」

と言われた。



でも明日は上田様のご予約が入っていて俺は強制抑制剤を飲めないから澤田様にお会いすることができない。


「大変申し訳ございませんが…」

と断りを入れようとしたらパフェが目の前に置かれた。


あれ?


「ん? これは柊さんのだよ、食べて」



さくら抹茶パフェ、ピンクとグリーンがきれいに調和している、壁に貼られている値段を見ると

3500円と記載があった。


ま・じ・か。


お客様の命令は絶対!!


「い…いただきます」

パクリと口にするとさくらの香りがふわぁーーと広がるのを感じた。


「お…美味しい」

「でしょ、ここの天然素材で美味しんだよね」


抹茶も変な味付けではなく、ちゃんと苦く、寒天も美味しい。


「やっと普通の笑顔見れた」

へ?


「柊さん、ずっと作り笑いしてたでしょ」

それが仕事だから。


「俺、分かるんだよね、そういうの」

自分の能力を披露しているのか得意げに淡々と話す。


澤田様は他のαと違う気がした、どちらかというと上司の杉本さんに近い感じ。

もし俺のことをΩと言われてもこの人は、きっと顔色一つ変えないのかもしれない。


会計時、席を立とうとすると

「ちょっと待ってて、トイレ行ってくるから」と

階段を降りて行った。


ここは2階席で隅田川に咲いた、桜がとても綺麗に見れる。



数分しても戻ってこられない。

なにかあったのか心配になるが


「よし! 行こうか」

と戻ってきた。


「あの、お会計」

「? あ、予約した時に払ってしまったから問題ないよ、俺の奢り」


桜舞う季節、俺はお客様に初めて恋をしました。


ホテルに戻り、夕食の準備をするのでと別れる。

「おかえりなさいませ、澤田様」

「あぁ、ただいま」



部屋には別の者がついていき、夕食の提案をする。

「本日はフレンチとイタリアンとどちらをご希望されますか?」


「そうだな…フレンチを」

「かしこまりました」


「柊は戻ってくるのか?」

「はい、この後」

といい、従業員は出て行った。


それにしても夜景が綺麗だ。

窓に手をついて恋人とHをする、なんていいな。

うっとりと外を眺めているとノックがされ部屋に柊がきた。

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