第20話

「俺だけを狙ってくるなら既に片がついてるんだけどな」


相手は無造作に魔弾をばら撒くだけでこっちに負荷をかけて、スタミナ切れを狙っているみたいだ。


ライフドレインは魔弾より隙が大きいからか使って来ないのがせめてもの救いか。

その隙を狙って攻撃するのも有りだけど。

失敗してライフドレインを発動されちゃうと

確実に被害が出るし。イレギュラーも回復してしまうからな。


使われない方が心臓に優しい。


それにしても、無造作にばら撒かれる魔弾を全て防ぐのは神経を使う。

氷の盾の耐久が低いと貫通しちゃうから耐久も意識しないといけない。


ミスをする前に、他の到達者が到着して欲しいけど。その気配が一切ない。


そんなこんなで、イレギュラーが魔弾をばら撒き、俺がそれを防ぐ。

全く同じ状況が続き完全な膠着状態。

あまり時間をかけると助かる怪我人も助けられなくなる。


そういった焦りが、どんどん強くなっていき集中力が薄れていく。

そして、ついに氷の盾を薄く作り過ぎてしまい。氷の盾を魔弾が貫通してしまった。

巻き込まれた人に直撃コース、なんとかして止めなきゃマズイが、間に合わない……


巻き込まれた人達に魔弾が直撃すると思った瞬間。魔弾に何かが当たったと思ったら魔弾が弾けて消滅する。


そして間髪入れずにイレギュラーの頭部を何かが貫いた。


狙撃っ!?そんな事より、撃ち抜かれた頭部の傷が再生し始めている。


追加の狙撃は来ない。俺にトドメをさせって事だろう。


イレギュラーに急接近し霊体化を解除して直接触れる。


「頞浮陀地獄」


イレギュラーを強力な冷気で包み込み一瞬で氷結させる。


霊体化中でも氷を作り出す事は出来るが、

これに関しては霊体化中には使うことができない。


しかも、操作の難易度も高く現在の俺では少しでも使い方を間違えると冗談抜きで地上に八寒地獄が出来上がる。


なので、本来は範囲攻撃だが触れてる敵を冷気で凍結させるという単体高火力攻撃になっている。


まだまだ上もあるが完璧に使いこなせる日は来るのだろうか……


いや、あんまり先の事を考えても意味ないな。

先ずは頞浮陀地獄を完璧に制御出来るようにならなくちゃ。

更に上については、そうなってからだ。


氷像になったイレギュラーは地上に墜落し、その衝撃で粉々になった。


流石にあそこから再生することはないだろう。



「そう言えば、霊体化中じゃなくても飛べてるな俺」



頞浮陀地獄を使うために特に何も考えずに霊体化を解除したけど。

下手したら俺も墜落してたな。


尸解仙になる前は霊体化を使って半透明な状態じゃなきゃ出来なかったし。

尸解仙というか仙人ならスキルがなくても標準で使える能力に浮遊も含まれているって事だろう。


確かに仙人って飛べるイメージあるし寧ろ納得できる。


特殊な到達者は、こんな感じでスキルなしでも

スキルみたいな能力を使うことが出来る。


それってなんか違いがあるの?と言われたら

さぁ?どっちも変わらないんじゃない?程度の認識しか俺にはないので困る。


なんなら、スキルって結構補助をしてくれてるみたいなので。スキルのほうが良いかもしれない。


そう思ってしまうレベルで、いま飛びづらい。


その場に浮遊しているだけなら問題なかったんだけど。

地面に降りようとしただけで目茶苦茶バランスを崩して、そのまま制御不能になって地面に墜落しかけた。


霊体化中に飛んでいるときには、初めて飛んだときもここまで酷く無かったのに……


その理由は霊体化のスキルが飛んでいるときに

色々な補助をしてくれていたからだ。


今回の件でそう確信した。


だからこそ、スキルのほうが良いかもと思ったわけだ。


スキルではない能力の利点……鬼童さんに聞いてみるか。


何でもかんでも聞いて頼っているが、実際それが一番確実何だよな。



「あ~色々と疲れた」


仮設の国軍テントの椅子に勢いよく座りため息をつく。


あの後、国軍のヘリが直ぐに来て事後作業は

自分達に任せてくださいと言ってくれたが。

流石にじゃあ後はお願いしますと帰れる程薄情な人間では無いので手伝った訳だが……


軍の人の言うことを聞いとけば良かったと、

もの凄く後悔した。


何が辛いって。

助けられなかった人の一緒にこの場にいた友人や家族に「アンタがもっと早く来てくれたら」とか「お前のせいで死んだんだ。この役立たず」だとか色々理不尽な文句を言われた事だ。


ふざけんじゃねぇ!!と言い返したい気持ちに一瞬だけなったが、それは直ぐに飲み込んだ。


俺に理不尽なことを言ってきた人達は俺より理不尽な目にあったばかりだ。

誰かに当たりたくもなるだろう。


「これでも、全力で頑張ったんだけどな……」


だからと言って何も思わない訳じゃ無いけどね。


国軍の人は本当に俺の事を思って後は私達がやりますって言ってくれてたんだな~


正直、俺が残らないほうが軍も頑張ってますよアピール出来るから俺を帰そうとしてると思ってた。


外から入っていいですか?と聞こえてきたので良いですよと答えると国軍の人が一人で入って来た。


「残って救助作業を手伝ってくれてたありがとう。おかげで多くの人を救うことが出来た」


「ありがとうございます。そう言って貰えたおかげで残ったのは間違いじゃなかったんだなって思えました。それと。狙撃でのフォローありがとうございました。あれめっちゃ助かりました」


入って来たのは狙撃で俺のミスをカバーしてくれただけでなく。イレギュラーの隙を作ってくれた軍人さんだった。


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読んでいただき有り難うございます。


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