第18話
「んっん~~」
飛行機のタイヤが滑走路についたときの振動で目が覚める。
「鬼童さんは、こっから車の運転があるわけですが大丈夫ですか?」
「私も仮眠はとったし。これから家に帰るぐらいなら問題ないわ」
今回、イレギュラーとの戦闘以外全て鬼童さんに任せっきりだったからな。
俺より疲れてるんじゃなかろうか。と思ったけど……
本人が大丈夫って言うなら大丈夫だろう。
幾ら鬼童さんにも思惑があって俺にここまで良くしてくれてる。とは言ってたけど。
お金すら全て鬼童さん持ちだからな……
純ミスリルをその分安くするか?
う~ん現状の俺でも出来る事といえばそのぐらいだよな。
そう言えば、ミスリルの分配の話とか夢境さんとせずに、フグレナードに行っちゃったから
どういう事になっているのか全くわからないんだよね。
純ミスリルの所有権を破棄した。みたいな事になってないよね?
出来るだけ早く、紫陽花町支部に行ってどうなってるのか確認しておこう。
「由希奈から電話……どうしよう。すごく出たくないのだけど……」
飛行機から降りて鬼童さんの車に向かって歩いていると鬼童さんのスマホから着信音が鳴る。
電話の相手を確認して凄い嫌そうな顔をしている。
そんなに嫌いな相手なのか……
電話を切るボタンと出るボタンの上を指を何度も往復させて、本当に嫌そうに電話に出た。
そう言えば俺も生きて帰って来たよ〜って母さんに連絡を入れておこう。
メッセージでも良いんだけど。電話を掛けたほうが安心してくれるだろう。
電話をかけると丸で掛かってくるのが分かってました。みたいな速度で母さんが出た。
わかってたというよりは。いつ掛かってきても直ぐに出られるように待ってたんだろう。
やっぱり相当心配かけてしまったみたいだ。
出来ることなら心配をかけたくないけど……
フレグナード公国の件を考えると、デスパレード発生が相当現実味を帯びてきてしまった。
本当に申し訳無いが、これからも心配をかける事になるだろう。
母さんとの電話を終えると鬼童の電話も終わっていたようだ。
「妖華町のダンジョンからイレギュラーが地上に侵攻を開始。既に少なくない被害が出てる。それで、桜花国所属の到達者全員に討伐依頼が出たって電話だったわ」
「鬼童さん。ここから妖華町まで飛んで急行する許可取れませんか。丁度、妖華町に友人がいるんです」
色々、残念なところはあるが、良いところだって沢山ある。何より俺の友達だ、助けに行かない選択肢なんて無い。
ここから普通の手段で向かったら結構時間がかかってしまうが。
自前で飛んでいけば、かなり時間を短縮出来る筈だ。
小回りは効かなくなるけど、全速力で飛べばかなりの速度出るはずだし。
霊体化してれば万が一何かにぶつかっても被害が出る事はない。
…いや、半透明な人間が飛んでるという状況自体が驚かせたり混乱を引き起こすか。
う~ん。後々文句を言われたくないし、いい方法ないかな。
どんな行動をしても文句をゼロにすることは出来ないが数を減らす事は出来る。
そうだ。幽霊って普通、目に見えない存在じゃん。
つまり。俺の霊体状態も半透明な状態ではなく、完全に透明な状態になれる?
「えっ!消えた!?」
意外と出来るもんだな。鬼童さんが消えた!?と反応したって事は透明化に成功したって事だ。
ただ、透明になっている間は浮遊して移動以外は何も出来ないっぽい。
魔弾や霊弾も当然使えない。透明なまま戦うのは駄目だよって事だな。
まぁ、お約束っちゃお約束だよな。透明化能力を使用中は攻撃できないって仕様。
「まぁ、今回は超一大事だし。許可は降りると思うわよ。そうした方が被害を抑えられるだろうし」
「それじゃ、お願いします」
━サイド 恵太、晋平(イレギュラーが地上に出現する前)━
「まさか、妖華町のダンジョンの入場に年齢制限がついただなんて……」
「ほんとにな……良いじゃね〜か20歳より若くたって」
サキュバスに会えるとウッキウキで妖華町に来た二人だったが。
今はこの世の終わりのような顔をして項垂れながら道を歩いている。
というのも。二人が覚醒者になり使えるようになったスキル〈カードバトラー〉でサキュバスを召喚できるようにして、サキュバスとキャッキャウフフするという野望が潰えたからである。
因みに20歳の年齢制限については調べれば直ぐにわかる。
二人がテンション上がり過ぎて、よく調べなかったのがこうなった原因だ。
白鹿がこの場にいたら。「というか調べなくたって何となく想像は付くだろ?」と突っ込んでいたことだろう。
「それにしてもどうしましょうか。夏休みの予定が全て吹き飛んだわけですが……」
「そうだな……!! 閃いたぞ!!特例を認められる程強くなれば良いんだ俺等が。すれば、20歳になるまで待たなくてもサキュバスに会える!!」
「成る程!!こういうときだけは天才ですね!!晋平くんは」
「馬鹿野郎っ!!一言余計だっ恵太」
「事実を言ったまでです。ともあれ、夏休み中にやることは決まりましたね。ご飯を食べながら、僕たちが効率良く強くなるのに良さそうな魔物の情報収集です!!」
「あぁ、そうだな!!」
さっきまでのテンションとは違い、今にもスキップを始めそうなぐらいハイテンションな二人は妖華町のご飯屋さんに入って言った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んでいただきありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます