ぼくらの!探してHAPPY☆ユートピア
3ず
0話 創られた救世主
地球 AA1-01 / 西暦2999年
ズるッ。ずルッ。
男が床を這う。男は震える腕で床を削るように、ゆっくりと確実に前進する。男の腹には穴があき、血がぬるぬると川の下流の様に広がっていく。男が最後の希望を目指して移動する音が、冷たい研究室に響く。
人類滅亡まで、あと30分。
これも、今這いつくばっている男の、世界に対する大いなる抵抗または、ごくごく個人的な怨恨のせいである。
男が生まれる数十年前に起きた大きな暴動により、人口が急激に減ってしまった。その後、下降した労働力に代わり、大量のロボットが流通するようになる。男は、製造に関わった研究員の一人だった。
また、男は他にも、とんでもない実験をこっそり行っていたり、国にとって煩わしい声の大きい活動家でもあったりと、比較的に人より死に近い場所にいた。
そのため、自分を殺したが最後。お前たちも道連れだと、ロボットたちに爆弾を仕込み、自分が死んだ時、各地に広まった大量のロボットたちが一斉に爆発するように設定した。
さらに、用心深いというのか、下劣というのか、核爆弾を搭載したロボットも作り研究所に隠していた。男が死ぬと外に飛び出し主要機関に向かう、普通の爆弾部隊が爆発すると、追い打ちをかけるように爆発するようになっていた。
やりすぎで過激な男だったが、最近は小さな幸せに目を向けられるようになり、今を懸命に生きるのも悪くないなと思うようになっていた。したがって、ロボットたちをどうやって回収しようかなと呑気に考えていたのだが、実行する前に、あろうことか、信頼していた同僚でもあり大切な恋人でもある、それこそ男を改心させた幸せのおおもとに裏切られたのだ。そのため、血の海の中、床に額をするはめになっていた。
非常停止や無効化の安全装置をつけておけというツッコミはもっともだが、男は、反出生主義に肩までどっぷりっと浸かりこんでいて、この世界がどうなろうとどうでも良かったし、さらには、後戻りできないことは硬い決意の表れであると思っていた。そのため、当初の怨恨通りにロボットは動き始めてしまった。
そう加減の知らない愚かで自己中心的なこの男のせいで、滅亡スイッチはオンになったのだ。
ただ、男は諦めずに最後の力を振り絞り床を這い、解決策を講じようと、一体のロボットの元に向かっていた。このロボットは、悪魔的設定から除外された相棒ロボットなので、動けなくなった男の代わりを務めるにはもってこいだった。
まだまだ辿り着けそうもなく、限界を感じて顔を下げて動きを止めた男のもとに異変を感じたロボットが大慌てで飛んできた。
男は、ロボットに指示を出すと、ゆっくりと仰向けになり呼吸をゆっくりと整え始めた。人類滅亡まで。ロボが爆発するまで。男が息絶えるまで。残り15分。
指示を出されたロボットは、大きなフラスコに似た機械を運んでくる。フラスコの中は液体で満たされており、さらに、いっぱいの触手のような管に繋がれた赤ん坊がいた。
ロボットは、男の指示を機械に入力し待つ。3分後、フラスコの蓋が自動で開き、中から赤ん坊を取り出しタオルに包んだ。
この時には、男はぴくりとも動かず、よく目を凝らしてみれば、真っ赤に染まった服がかろうじて上下するのがわかるだけだった。
赤ん坊がどうして、解決策になるのかというと、時間がないので、本当に簡単に言うが、男のとんでもない実験というのは、タイムトラベルなのだ。男は過去に行き、暴動の原因になった事柄を排除しようとしていた。その実験の成果を流用して赤ん坊に希望を託した。
この世界の滅亡は、“今は”止められない。けれども、過去に戻ったならば?諸悪の根源を取り除くことができたならば、この間抜けな終焉は避けられるのではないか?こうして、世界の破滅を防ぎ、なんなら平和へと導いていくこと、それが生まれたばかりの赤ん坊の使命となった。
ロボットは血の気の引いた男の首からドッグタグのついたネックレスを外し、赤ん坊に取り付ける。仕上げに、辞書のように分厚いノートを開き赤ん坊への指示を書き記し、ペンと数字の並んだコンパスのような道具と共にカバンに入れる。
近くにいる爆弾ロボットが点滅し始める。
一瞬、邪魔者が現れたが、爆発まで、あと10秒。
8、7、6…。
5秒前。
ロボットの腕から、すっと、赤ん坊の姿が消えた。
そして、3、2、1…。
あたりは静まり返り、ピカッと強い光が突き抜ける。
こうして、世界は白に飲み込まれた。
地球 AA1-01 西暦 2999年
人類滅亡。
つづく…
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SF書きたいけど、知識が足りなすぎるのでファンタジーって言って誤魔化してます。拙さと矛盾を抱えてますがお付き合いいただけたら嬉しいです^^
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