丹生都姫(にうつひめ)、全てを語るの事(その一)
その足元には
「佐伯の民よ、大儀であった。約定を違わず履行されたそなたらの行い、このなよ竹、心より感謝いたす」
「なよ竹のかぐや姫」の言葉に、山の民たちは一層かしこまる。
「
姫の言葉に、樹人たちがザワザワと葉をざわめつかせ、辺り一面に濃い樹液の香りを充満させて行く。
「そこな常陸国の民よ。そなたらにも感謝申し上げます。
姫が静かに頭を下げる。金平は何か言葉にしようと必死に頭を巡らせるが、気の利いた台詞の一つも思い浮かばずただ口をパクパクさせている。
「もう、しっかりしてくださいましな、
姫が金平に向かって微笑みかける。その目、その顔、間違いなくこの姫は……
「
「はい、あなた様が育て、お守り下さった
「…………」
「これが私。空海様の手で眠りにつかせていただく前の、私の本当の姿。人間ではない、月の……」
「そんな事はねえ!お前は、お前は立派な……」
思わず声に出してしまった金平は、それ以上言葉を継げない。
「ありがとう、父さま……。最後に私を育ててくれたお方があなたで……本当に良かった」
目を伏せた姫の目に涙が浮かぶ。
「最後……?」
「はい、
「!?」
姫の言葉を聞いて、その場にいた全員が混乱した。月に帰る?いや、その前に今彼女はなんと言った?
「あなたが……徐福!?」
「はい……正しくは
姫の説明に金平は理解ができずに呆然とする。さしもの影道仙も頼義も、彼女の言葉に意味の予測がつかず首をひねった。
「不老不死の仙薬を求めるにあたり、徐福は三つの手段でもってその実現に取り組んでいました」
「三つ……」
「はい。一つは月の魔力を人間の肉体に注ぎ込むことによって得られる不死の術。しかしこれには同時に月の狂気と獣人へと変貌する呪いを受けるという負担があった……」
頼義たちは月の魔力に狂い、虎となった不死の人物、
「もう一つは、月の霊力と龍脈の霊力を物質化し、その膨大な霊力を人体に直接取り込むことができるように結晶化したもの、つまり『
金平は
「最後に、徐福は前の二つとは全く違う方法で『不死』へ到達しようと試みました。それが……私」
そう言って「かぐや姫」は自らの胸に手を当てた。
「……?それは、どういう……?」
今回ばかりは自分で説明できないもどかしさにヤキモキしながら影道仙が尋ねた。
「つまり……『私』という存在を記録媒体として、人間の記憶と経験の全てを保存する、という方法です」
三人が呆然として姫の言葉に聞き入る。
「それは……つまり、徐福はあなたの中に自分の記憶と経験を書き写し、それを保存する事で『不死』を得たと、そういう事?」
頼義の問いに姫は静かに頷く。
「肉体を捨て、無機物である私に自我を
そこまで言って、「かぐや姫」は再び沈黙する。
「……先ほどあなたは『徐福
重ねて聞きただす頼義に、姫は静かに目を閉じて答えた。
「徐福と共に不老不死を求めた
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