影道仙、少女の正体を推察するの事(その四)
「おう、だいたいわかった。で、これがコイツとどう関係あるんだよ?」
(本当にわかってるのかなあ)という顔で
「この『龍脈』の上の土地では強力な霊力が発せられています。四つの霊力が流れ込んでいるのですから当然ですね。そのためこの『龍脈』の上には古来から多くの祭場や神社、寺院が立てられ、祀られてきました。例をあげればキリがありませんが、この国の主要な聖域は皆この『龍脈』の上に存在するといっても過言ではありません」
金平は影道仙の長話に段々といらつきが隠せなくなってきた。話がいつまで経っても自分の聞きたい本題にたどり着かない。
「だからよう、それがコイツとなんの関係があるっつーんだよ!?」
堪り兼ねて金平が大声を上げた。
「……お前は本当に気が短いやつだのう。お前のために説明してやっているというのに、そんなでは女にモテんぞ。女というのはとかく話を聞いてもらいたい生き物であるからな」
「八幡神」が呆れて金平をたしなめる。金平も自分のそんな短気は悪癖であると重々承知はしているが、それで簡単に直せるようであればこんなに苦労はしない。
「〜〜〜〜!!わかってるよンなこたあ!!クソッ!」
「はいはい、いよいよ本題に入るから我慢して聞いてくださいね〜。さてこの『龍脈』ですが、もう一つの特徴として、この地帯では
「は?」
「硫化水銀、つまり『
「…………」
「この『龍脈』上には聖域だけでなく、水銀の採掘場も多く集まっています。古代の遺跡から今なお現役のものまで含めて、ね」
「そ、そうなのか」
「そうなのです。ではここで徐福が我が国に流れ着いてからの移動ルートを思い出してみましょう。まず彼は肥前佐賀に流れ着いた。その後紀伊熊野に拠点を置き、さらに東下して富士山の麓で息を引き取った。彼の辿った道はそのまま『龍脈』の、つまり不老不死の仙薬を作るための『辰砂』を発掘するための道だったわけです。徐福の旅は富士で終わりを告げましたが、もし彼の遺志を受け継いでさらに『辰砂』を求めて『龍脈』を辿った者がいたとしたら、その人は最終的にどこに辿り着くでしょう?」
「……
「ご明察〜」
影道仙は
「その、徐福の遺志を継いだ奴ってのが常陸国にやってきて、コイツを生んだっていうのか?」
「そう、あの筑波山でね。そしてその子を『うつぼ船』に乗せて眠りにつかせた。それが何百年前の事か、なんの意図があってそのような処置をしたのかは知りませんが」
「…………」
金平は思わず抱えている
「にぃ?」
金平は少女の頭を撫でる。彼女も金平に頭を撫でられたのが嬉しいらしく、ご満悦の表情で金平に寄りかかる。はたから見ればどこにでもいる普通の親子のようにしか見えないだろう。影道仙もそんな二人を見て笑みを浮かべる。その微笑みが二人の即席の親子のような姿に
「で、その後継者とやらが行き着いた場所が筑波山だったわけだ。そりゃあどうしてなんだ?お前は初めっからコイツがあそこにいる事を知っていたようだったじゃねえか」
「もちろん。徐福の一党が富士をたって東へ向かうとすれば最終的に筑波山に辿り着くであろうことは予想していました。『常陸国風土記』の筑波郡誌によれば、神代の昔
影道が筑波山の昔話を語る。その話は金平も頼義とともに常陸国中を視察して回った時に村の古老から話を聞いた覚えがある。
「つまり、富士山が寂れて筑波山が栄えたという事か」
「そう。徐福の一族が富士を去って
「ふむ……」
理由はともかく、徐福の後継者は『龍脈』の最果てである筑波山に流れ着いた。そしてかの地で彼らは『金丹』を完成させたと、お師匠さまは言っておられました。私はその『金丹』の所在を確かめるためにお師匠さまの命を受けてこちらに参ったという次第で。もっとも、
「は?今なんつった?おい、まさか……」
金平が影道仙の言葉に反応して思わず身を乗り出した。今彼女はとんでも無い事をさらりと言ってのけたような気がする。
「そうです。この子自身が徐福が完成させた金丹、
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