影道仙女、安倍晴明の言葉を伝えるの事
「
馬上のまま頼義は自分を見上げる狩衣姿の少女に向かって言った。
「いかにも。我が師
「助力だあ?あのクソジジイがまた余計なちょっかい出しにきたんじゃねえだろうなオイ」
金平が頼義に促されて彼女を馬から下ろしながら少女に向かって言う。自分はこの女性に見覚えはないが、どうやら彼女の方は金平のことを見知っているようだ。
「お師匠様に対して無礼な発言は許さぬぞ
「なんだとおこのクソアマ、ジジイの使いだかなんだか知らねえがあんま調子こいてっとやっちまうぞコラ」
自分の身の丈の半分も無いような小柄な少女相手に大人気なく凄む金平の頭を鉄扇ではたきながら頼義は影道仙の前に降りた。
「ご助力感謝いたします。というとやはり晴明様は『
「さて、仔細は
そう言って影道仙は一通の封書を頼義に手渡した。頼義は封書を受け取るとそれを金平に手渡し、読むように命じる。金平は頼義にはたかれて痛む頭をさすりながらブツブツと文句を言いつつも手にした書状を読み上げた。
「えーっと、『
読み上げた金平が狐に鼻をつままれたような顔をして書状を頼義に返す。頼義も、隣で聞いていた経範も揃って小首を傾げた。晴明の書状には「悪路王」に関する情報も助言も無く、ただこの手紙を運んできた少女の、言わば「取扱説明書」のような内容が簡潔に記されているだけだった。
当の本人はえらく自慢げに胸をそらして三人を見回す。
「まあ、この大魔導士たる私なれば晴明くん、もといお師匠様の絶賛も当然といえば当然な事です。私ほどの術者ともなれば一度その呪法を唱えれば天は割れ地が裂け、大海原も干上がってしまうほどの天変地異をもたらしてしまいます。故にお師匠様は私に方術の使用を禁じられました。ですがご安心ください、術を抜きにしても私の才能を持ってすれば貴殿らの役に立つであろうことは間違いない。またいざともなれば禁を破って我が術を振るう事もやぶさかではありません。ていうか使います。ともあれ、私がいるからには大船に乗った気分でいられるが良いご一行」
あの安倍晴明のお墨付きを受けた方術士なだけあってものすごい自信のほどである。人品に多少クセはあるものの、頼もしい存在であることには変わりはあるまい。
「まあ、いくら私が偉大な大魔術師だといってもそういちいち畏まられても難儀ですので、特別に私の事を『ポンちゃん』と呼ぶ事を許可しましょう。それならば私の事も気安く相対する事ができましょう」
「…………」
「ん?どうしたのかね?良いのですよ気安く『ポンちゃん』と呼んでも」
「……では
「あれー!?」
頼義の
「なるほど、お前友達いねーだろ」
金平が容赦なく核心を突く。
「ななな、何を言われる!?私ほどの術者なら友達百人作るくらいわけもない事、ほらこのように……」
傍目には努めて冷静を装いながら影道仙はせっせと折り紙を
「あーわかったわかった友達たくさんでいいなーうらやましいなー。で、お前さんは俺たちに何を助力してくれるんだい?」
金平にあやされて影道仙はコホンと咳払いをして場を改める。
「で、では早速ではありますがご一行の求めておる『
影道仙がようやく本題について語り出した事で、頼義たちはそれまでの緩んだ空気から一転して緊張した面持ちで彼女の言葉を聞いた。
「まず徐福がどのような経路を通って我が国にその足跡を残して行ったかをご説明しましょう。かの方術士は三千人の童子童女、技師、職工などを引き連れてまずは
影道仙の説明に佐伯経範は頷く。そこまでは彼も家伝や読み漁った資料で知っている事だ。その程度のことならば彼女に教えられるまでも無く頼義たちには説明してある。
「そうでしょうそうでしょう。そこまでならばそこらの凡才の皆さんでも少し調べれば分かる事です。別段驚くに値しません」
いちいち癇に障る物言いをする御仁だが、本人は悪びれる事もなく話を進める。
「では徐福はなぜこの経路を選んだのか?彼は行く先々で何を求め、何を発見していったのか?それこそが『徐福』と『不死』とを結ぶ接点となります」
影道仙はもったいぶるように話を途切れさせる。
「それは、一体……?」
焦らされた頼義が急かすように問い返す。影道仙は
「『
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