眞髮高文、鹿島神宮の由来を語るの事
「今、何と言われた!?『
「ぎょ、ぎょぎょぎょ……」
「眞髮どのは『悪路王』が何者なのかご存じなのですか!?教えてください、『悪路王』とはいったい……!」
「まったまったまった。話す前にオッサンが死ぬ」
金平が
「あ……これは失礼をば」
頼義が慌てて手を離す。
「おおお、三途の川が一瞬見えた。俺っち川漁はしねえんだよあービックリした」
まだ目を白黒させている高文に、頼義はあらためて今彼が口走った『悪路王』という名について詳細を求めた。
「んー、あっしも詳しい事ぁ知りやせんが、ここらじゃあ『北』から襲って来る
高文の説明に頼義はふむふむと頷く。父が話していた「
「
眞髮高文は意外な返事をした。「悪路王」の言い伝えは歴史的事象の比喩では無く、実際に巨大な大鬼が攻め来るのだと、彼はそう言った。
「若さまはご存じか知りやせんが、
頼義は記憶を巡らす。那珂郡ももちろん巡察に行ったが、その「大櫛」という土地には足を運んだ記憶はなかった。だが頼義は、金平に読み聞かせてもらった「常陸国風土記」の中に同じ事を語った記述があった事を覚えていた。すると、その巨人こそが「悪路王」であったのだろうか。
「まあ、あっしも
「鹿島神宮へ?」
「へえ。あ、若サマは鹿島のお社の由来をご存知でない?いやあっしも詳しくはねえが、元々鹿島ってトコは大昔はもっと細長い『岬』のような形をしておりやしてね。その先端に
「砦?鹿島のお社が?悪路王と戦うための?」
頼義が驚きの声を上げる。古い神社であることは知ってはいたが、それは初耳だった。
「へい、あそこと
眞髮高文の説明を受けて、頼義は思考を巡らす。鹿島神宮の主祭神は「
「その北の蝦夷たちのもたらす最大の脅威が『悪路王』であったと、ということか……」
筑波での異変、鹿島灘での異変……まさか、本当に「悪路王」が再びこの地を襲う前触れだとでもいうのだろうか。少なくとも「
(備えよ、守れ……悪路王が来る……!!)
ひとまず頼義は即席の紹介状を
頼義と金平は再び馬を走らせて急ぎ筑波郡の
夕刻、日が沈んですっかり辺りが暗くなった頃に郡衙まで戻って来た頼義と金平は、再び目の当たりにした異常事態に只々呆然とするばかりだった。出発する前は何も変わらぬごく普通の郡庁舎のあった街並みは今……
無数に乱立する大樹に覆われて鬱蒼とした森に変化してしまっていた。
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