異世界にゃんこ~ハーレム異世界で猫に転生したからニャン生楽しむ~

あかねこん。

プロローグ

0-1

「……し」

 微かに何かが聞こえる。

「……もし」

 ん?これは声だ。綺麗な透き通った女性の声。

「もしも~し、聞こえますか?」

 そんな綺麗な声がだんだん大きくはっきりと聞こえてきて、俺は目が覚めた。

「はっ」

「あっ、目が覚めましたね~」

 目を開いて視界に広がった光景に俺は目を疑った。

「えっ」

 困惑しながらも眼前に広がる綺麗な若草色の草原に目を奪われる。

 晴れ渡った気持ちの良い空に風に空気。

 こんなに爽やかな気持ちいつぶりだろうか。

「大丈夫ですか?気分が悪いですか?」

 そんな目の前の光景に見惚れていると、俺の視界の端から、これまた綺麗に整った端整な顔つきの、白髪を腰まで伸ばした女性が現れた。

 女性は心配そうな表情をしてぐいぐいとこちらに顔を近づけてくる。

 八の字に変形した白い眉毛、綺麗な青い瞳に、透き通るような肌、淡い桃色の柔らかそうな唇。

 近づいてくるそのご尊顔はどこから見てもまごうことなき美女のご尊顔だった。

 こんな至近距離で女性の顔を見た事がない俺は恥ずかしくなって、下に顔を落とす。

「いっ」

 落としたのもつかの間、視線の先には、とてつもない強烈な破壊力を持つたわわと実ったが俺の眼前に待ち受けていた。

「っと」

 慌ててすぐさま視線を上に戻す。

 そこでニコッと微笑む美女さんと目が合った。

 かぁーと自分の中の熱が上がっていくのを感じる。

 まずい。まずい。まずい。

 このままでは自分の体温で焼け死ぬんじゃないかと思ってしまう。

 ん?焼け死ぬ?

 はぁ!そうだ。俺死んだよな?猫助ける為にトラックに轢かれて。

 じゃあ、ここはどこだ?天国?

 天国ってこんな一面草原まみれの場所なの?

 俺は辿れるだけの自分の記憶を思い出してみる。

 確か、その日は2月22日で俺の30歳の誕生日だった。

 その日はバースデー休日という奴で休みだった俺は、彼女も友達もいない為、一人で家近くの猫カフェに行くつもりで外に出たんだ。

 んで、その途中にある大通りの交通量の多い交差点で道路に飛び出した野良猫を見かけた俺は考えるより先に身体が動いてて、トラックに轢かれた。ここまでは何とか覚えてる。めっちゃ痛かったから。

 でもその後の記憶が全くない。恐らくそこで逝っちまったんだろう。

 ご臨終、俺。

 で、目を覚ましたらここにいたというわけなんだが。

 話の流れで行くとやっぱりここは天国?

 考え事で難しい顔でもしていたからだろうか。美女さんが俺の頭を優しく撫でて言った。

「よしよ~し。それじゃ私のお家に行きましょうね~」

 そう言って美女さんはしゃがんでいた身体を起こすと、布面積の多い修道服のようなスカート部分をパンパンと手で払って、俺を抱きかかえた。

「えっ、ちょ……まっ」

 俺は声も出せないまま、なされるままに美女の腕にすっぽりと収まってしまった。

(どういうことだ!?)

 何で俺はこの人の腕にすっぽりジャストフィットしている!?

 この人何者なん?成人男性をすっぽりジャストフィットって巨人か何か?

 あっそうか。ここは天国だから大きい人の一人や二人いるってことか。

 確かに天国って壮大なイメージあるもんな。

 なぁーんだ。そっかそっか。びっくりした。はっはっは。

 何てこの状況に説明をつけるための口実を考えていると、美女さんは草っ原に置いていた何やら緑やら紫やらの草が入ったバスケットを手に取り、自分の胸元からおもむろにひし形の綺麗な半透明の青い石を取り出した。

「さぁ帰りますよ~」

 美女さんはそう言うと、取り出した青い石を頭上に掲げた。

 すると青い石はまばゆく光りだし、俺達の身体を包んでいく。

瞬間、目の前の草原は消え失せ、次に時を感じた時には、洋風のレンガ調の建物に俺達はいた。

「着きましたよ~」

 美女さんはそう言うと光る青い石を再び胸元に戻し、バスケットを腕にかけ、俺を抱きかかえたまま近くの扉を開けた。

 扉の先には木のテーブルに朝食らしき食事が置いてあり、テーブルの周りには同じ材質のイスが数個おいてある。

 その奥には薪をくべて使う暖炉があり、暖炉の前には、3人掛けのソファがコの時に設置されていた。

 部屋の右手部分はキッチンになっており、先ほどまで使っていたであろうフライパンやら鍋が流しに転がっている。

 美女さんはニコニコしながら、キッチンの奥に入っていく。

 中はどうやら洗面台とトイレ、そして風呂といった水回りの設備があるらしい。

 バスタオルや衣服その他備品が綺麗に棚に並べられている。あと、何かいい香りがする。

 棚のバスタオルが積み重なる上に俺をポンと置くと、美女さんはおもむろにその重そうな修道服のような装備を脱ぎだした。

(おいおい……ちょっと待ってくれよ)

 まさかと思いながら、つばをゴクリと飲み込んだ。

 あっという間に美女さんは服を脱ぐと、白のレース生地の下着になる。

(ヤバい……ヤバいぞ、これ)

 状況的には見ちゃいけない奴なのは従順承知である。

 紳士として、ここは目を伏せるなどの行動を起こすべきなのも承知。

 しかし、目が離せないのである。美女さんのけしからん兵器から。

 こうしている間にも美女さんはブラのホックを外そうとしている。

 「シュシュ?いるの~?」

 刹那、食卓の方から可憐な声が聞こえた。

 その声に美女さんの手が止まる。

「メルダ、帰ってますよ~」

 美女さんが声の主と会話を始めた。

「朝食作ってたんだけど、パンプッシュ切らしちゃって買いに行ってた」

「私の方は薬草集まりましたよ」

「本当?助かる」

「あとで調合しますからお待ちくださいね」

 そう言ったタイミングで美女さんはホック外しを再開する。

 美女さんを見ていた俺は、気配を感じて洗面所の入り口に視線を移す。

「さぁて、朝食食べようか。ってシュシュ?何やってるの?」

 声の主はそう言いながら、洗面所を覗き込んだ。

 ……そして俺と目があった。

「いやぁぁぁぁぁ!!!!シュシュ何それ!?」

 洗面所を覗き込むのは、金髪碧眼の細身な体型のツインテール少女だった。

 ツインテールさんは身を仰け反ると、ブラのホックを外そうとしている美女さんを見て続けて言った。

「シュシュそれ何拾ってきたの!?そしてアンタは何で脱いでいる」

「いや~薬草を取りに行った際に倒れていたので、保護しました~元気がなかったのでお風呂に入れようかと~」

「保護って、そんな得体の知れないモンスターを!?何なのよそれ?全く見た事ないわよ」

「ん~でもちっちゃいですし、安全だと思います」

「もう~だからアンタはもっと危機感ってもんをね~」

 何だ何だ。さっきから聞いていれば、得体の知れないとか小さいとか。

 見た目は君らと一緒だろ。人型だよ、人型。確かに君ら巨人から見れば俺ら人間は小人かも知れんが、わざわざ言わなくていいだろ。これが俺の個性。大きいのが君らの個性でいいだろ。

「でも、毛むくじゃらでもふもふしてて可愛くないですか?」

 誰が毛むくじゃらでもふもふだ!そんな猫じゃないんだから、そんなわけないだろ。

 そこで、俺は両手を前に出した。

 そしてそこに映る驚愕のモノを視認する。

 そんなわけ……ないだろ。

 そんなわけ……

 眼前には黒い毛で覆われたとってもキュートでプリティな肉球があった。

(えっえっえっえっ……)

 鼓動が激しくなる。ドッ。ドッ。ドッ。ドッ。

 お次にもしかしてと顔を触る。手を後ろに回してを掴んだ。

 あるっ!しっぽだ!

 ありえないありえないと思いながら、全身くまなく確認する。

(嘘っ!?マジぃ?)

 いや、嘘じゃねぇ。しっぽ・耳・毛むくじゃら・肉球...俺、猫になってる!?

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