宝石の朽ちる夕(百合短編集)
篤藤
花の朽ちる音
三橋 知舟(みつはし ちふね)
相田 翔音(あいだ かのん)
貴女は化粧が好きだった。花西子やflowerKnowsと言ったパッケージまで可愛らしいコスメが好きだったよね。
でも、鬱血した顔はどんな化粧より可愛いよ。私は思わず髪に指を通す。昨日まで貴女はボディタッチすらさせてくれなかったよね。私寂しかったんだ。
午前四時の四畳半の中で貴女は花と散り朽ちていく。
博愛主義の貴女は色んな人を愛して、色んな人に愛された。
それが嫌だった。私だけの貴女で居て欲しかった。私にしか愛されない貴女で居て欲しかった。
もう貴女は憐れまれることはあっても愛されることはないんだよ。
やっと私だけの翔音になってくれた。
貴女は私を嫌うのかな。例え嫌うとしても嫌われる前に貴女の時間が止まって良かった。貴女に嫌われたら私何するか分からない。貴女の前で貴女の愛おしいものを壊して、それを愛と呼んでしまうかもしれない。貴女の世界から貴女の愛おしいものが無くなることを幸せと称してしまうかもしれなかった。
私はね、歪んでも壊れてもいないよ。ただ、貴女への「好き」の表現が貴女を殺すことか何かを壊すことでしかなかっただけの乙女。
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