戯れ

えそら琴

 

「君とのおしゃべりにも飽きちゃった」

彼女は空に向かって手を遊ばせながら、そう言った。


「それは残念」

そう僕が言うと、クスッと笑われた気がした。


「ここを出たら私、殺されちゃうかな」


「上は、連れ戻すことより消すことを命じるだろうね。

でも君は、そう簡単にやられてくれないでしょ」


「何それ。経験上の勘ってやつ?」


「そんなところかな。君は賢いし」


「それは光栄ね。まあ確かに、殺されるなんてヘマはしない。

死に方は自分で選ぶ。でも…」


彼女が僕の手に彼女の首を掴ませる。

「君に殺されるのは悪くない」


全く、彼女らしい。


「僕も。君に喰べられるのは悪くない」


そう言うと、彼女は笑みを浮かべ僕の小指を噛んだ。

血が流れたが、不思議と痛みは感じなかった。


「不味い。君を喰べるなんて、きっと私くらいね」


「君を殺せるのも僕くらいだよ」


彼女がクスッと笑う。

「楽しみにしてる」

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戯れ えそら琴 @esora_510

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