東京のビル

初めて東京に行った時を未だに覚えている。


あの時の感動は凄まじかった。


いつもの町に帰ってきた時には友達にいっぱい自慢した。


自慢なんてあまり好きじゃなかったけど、なんでか止まんなかった。


あの大きなビル群、


信号を渡る時は人を避けて通らなければならない


言葉にすれば不便そうだけど、僕にとってそれは夢のような場所だった。


何もかもデカくて、高くて、かっこいいんだ。


でも、そのせいかな。


僕は気付くと、自分の町が凄く小さく見えるようになってしまっていたんだ。


今まで見てこなかったような景色を一度に見たんだから当然っちゃ当然。


でもあまりにも、愛が薄すぎないか?


こんなに、この町から引っ越したいなんて思っていいのか?


土地が沢山あって、畑仕事を頑張ってる人もいっぱいいるのに、凄いなんて理由で、無責任じゃないか?


頑張ってる人がいるのに、僕だけ逃げるのか…?


だけど、それは僕だけじゃなかった。


気付くと周りの友達もみんな東京に行きたいつて言い始めたんだ。


あの青いビルが見たいって。


人が見たいって。


僕が大人になればもう周りの友達はみんな都会に行ってしまうんだろうか…


今は少子高齢化で若い人を求めてる人がいっぱいいるのに。


そんな人を置いていっていいのかな。困らないかな…


僕の憧れや夢を誰かのために捨てていいのかな


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