第40話 相棒との再会は、新たな試練(試鞭)の始まりなのか?(その3)
唖然として折れた竿先を見つめる百花、雫斗は予測して居たとはいえ 無残な結果に落胆は隠せない「ごめん、折れちゃった!!」と百花。悪気は無いのである、強いていえば今の百花や雫斗達にはカーボン製の竿先は強度不足なだけなのだ、それを考えるとネットで注文した短鞭は強度的に大丈夫なのか疑問が残った。
「いいよ、まずその竿先では強度的に持たない事は織り込み済みだし、だけどな~。父さんから貰ったその日に、壊れてしまうとは思わなかったよ」としょげ返る雫斗に、何を思ったのか百花が「これあげる!」と渡してきたのは木刀と飴玉数個と、トレントモドキの魔晶石だった。
百花なりの謝罪なのだろうが、”その飴玉は自分が上げたやつじゃん”と思ったが、さすがに要らないと突っぱねる事はできないので、今度何か検証する時に付き合ってもらうことでいい事にした。
そのやり取りを聞いていたロボさんが「どんな武器を想定してその釣り竿を持ってきたのですか?」と聞いてきた。
「鞭なんだ、一応革製の物を注文したんだけど強度が不安だよね?」と雫斗が言うと「確かに鞭の類では金属は使えませんね、柔軟性が求められますから」と残念そうなロボさん。
竿先が壊れた事も有り雫斗とロボさんは帰ることにした「僕たちは帰るけど百花達はどうする?」と聞くと、百花達はもう少し収納の攻撃力を試したいからと残ることにした様だ。
ダンジョンの入り口に向かいながら、ロボさんと二人で短鞭の強化について話し合う、細いワイヤーをメッシュ状に編む案や強度のある鋼を細く束ねて皮で編み込むなど色々な事を話したが、遣ってみない事には分からないと言う事で、注文した鞭が来てから考えることにした。
ダンジョン前の受付に着くと、芳野先輩と野島先輩が猫先生と話しながら待っていた「遅くなりました、気分はもういいのですか?」と雫斗が聞くと「大丈夫よ、30分くらいで回復したわ」と言うので、再びダンジョンへ。
1階層の入り口に近い広間で、一人ずつ収納から取り出してもらう、芳野先輩は45キロで野島先輩は52キロとばらつきがあるが、取り敢えずすべて出し終えた。心配していた魔力酔いも無く安心したが、もう一度収納してどれだけ収納出来るのか試してみたいというので、二人が小石を一度収納し始めた。
出した分収納をしても大丈夫そうなので、そのまま限界まで収納してもらう。一度魔力酔いを経験している分慎重に収納していたが、どうやら限界まで収納しても大丈夫みたいだった。それぞれの限界量は、芳野先輩が92キロで 野島先輩が108キロだった。大体体重の2倍強の収納は変わらない様だ。
「でも、どうして今度はなんとも無かったのかしら?」と野島先輩「多分だけど、魔物を倒した直後は経験値的なものが体に反映されていないのかも、それで時間と共に馴染んでいくのかもしれません」と雫斗が自分の考えた事を話す、あながち間違いじゃない気がする、雫斗がスライムを50匹以上倒して収納を覚醒させたのは、前日のハイオークを倒した後だったので、魔力酔いを起こさずに済んだのかもしれない。
そのことから魔物を倒していない初心者が収納を覚醒させても、最大量収納する事は最低2時間は時間を置くことが望ましいと報告することにした。
二人が収納の投擲を教えてほしいというので、基本のやり方を説明して見せてあげた、しばらく試していたが時間は掛かっても二人とも出来た。ダンジョンの小石を使っての収納からの投擲は、習得しやすいようで、出来なかった人は(ロボさん含む)いない、カードの機能はすべての人が使える様だ。
ロボさんが、大ハンマーを使っての収納の打撃を披露して、此れなら時間もかからずスライムの討伐が出来る旨教えて、今日は帰ることにした、芳野先輩も野島先輩も、時間が有れば魔物を倒して自分を強化するつもりの様だ。
雫斗は家に帰る前に、採掘した鉱石を鍛冶工房に下ろすために工房へと向かっていた、当然ロボさんと一緒だ。そこで”トオルハンマー”の改造について話あっていた。ロボさんの考えは、攻撃に関しては重量での叩きつけで構わないが防御に一抹の不安が有るらしい。
つまり棒術の様に使うには重量のバランスが悪く、いまいち使いにくいそうなので中間に重りを配置し移動できるようにして、ハンマーヘッドと持ち手のバランスを取りたいらしい。
つまり両端の重さの違う大きめのバトンの様なものになるらしい、雫斗はいまいち想像できなかったが、打撃に関しては重りが移動するらしく攻撃力は倍増するらしい、承諾してそのまま作って貰う事にした。”トオルハンマー”がどの様に変わるのか楽しみである。
工房で鉱石を換金してもらう、直接持ち込む探索者がいるのでその装置も置いてあるらしい、”トオルハンマー”が出来上がるのは4・5日掛かるらしいので、出来上がったら連絡をもらう事にして雫斗は帰って行った。
その夜の夕ご飯の後、母親の悠美に報告を兼ねて収納で出来る事を録画した動画を見せる「あら?百花ちゃん良く承諾したわね」と不思議がっていたが「竿先を使った投擲を交換条件にしたら、即答で承諾したよ。協会の人以外の閲覧は禁止だって」と雫斗が言うと納得していた、最後は竿先が折れるところで終わって、父親の海嗣が複雑な顔をしていたが何も言わなかったので、スルーする事にした。
芳野先輩達の事を報告した後「これで終わりなの?」と悠美がスマホの動画を、自分のタブレットに移しながら聞いてきた「後、収納したポーションや飲み物も直接飲む事が出来るよ、練習しないと大変な事になるけど」と言葉を濁す雫斗。
動画を移し終えたタブレットに、書き込みながら悠美が聞いてくる「大変なことって、どうなるの?」雫斗は話す内容を考える、下手に話すと自滅しかねない。
「飲み込める量を超えると吹き出してしまうんだ、最初は量の少ない、栄養剤みたいな物から試した方がいいよ」。
思い出して、笑いを堪えるのに必死な雫斗を不思議そうに見ながら「そうなの?」と追及してこなかったのは有り難かった。「他には?」と聞かれた雫斗は「体に付いた汗や泥などの汚れも収納出来るね、ただ気分的な物だけど、収納の中にその汚れが認識できるんだ。すごく気持ちが悪い」と身震いする。
「それから、これが本来の使い方だと思うけど装備の出し入れだね」と立ち上がり、百花達にみせた鍋の蓋と木刀を使った、チャンバラ踊りを披露して、最後に高速着替えで幕を閉じた。
「分かったわ、あなた達が常識はずれだって言う事が」と悠美母さんがため息を付きながらその日は終了したのだった。
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