野良猫名探偵「メガネ」とその助手「くつした」

磧沙木 希信

野良猫名探偵「メガネ」とその助手「くつした」


 僕の名前は「メガネ」。自由気ままな野良猫だニャ。


 名前は人間が勝手に決めたニャ。

 

 白猫だけど「目の周りが黒くて、メガネをかけているみたい」と言われたからだニャ。


 誰に言われたかは、もう覚えてないニャ。


 でもみんな僕の事を「メガネ」と呼ぶんだニャ。不思議だニャ~。


 そもそも「メガネ」ってニャんだ?


 そんな僕の仕事はどんな事件も解決する探偵だニャ。


 今日も町の平和を守るため、見回りをしているニャ。



「今日も平和だニャ~」


 春のポカポカとした陽気が気持ちいいニャ~。


 川沿いの土手で、うとうとしていると「バタバタ」と足音が聞こえてきた。



「せんぱ~い! 大変だニャ~! 」


 この黒猫は僕の助手「くつした」。僕と同じ自由気ままな野良猫だニャ。


 黒猫なのだが「足元が白くて靴下を履いているみたい」と言われたから、らしいニャ。


 だから僕も「くつした」と呼んでいるニャ。


 でも「くつした」ってニャんだろう?

 



「どうしたんだニャ~。そんなに慌てて」


「オイラの、オイラの大切なネズミのおもちゃが無くなったんだニャ~。それを探してほしいニャ~」


 確かに、いつも大事そうに持っていたニャ、ネズミのおもちゃ。



報酬ほうしゅうはなんだニャ~」


「これをどうぞ、だニャ~」


 そう言って、くわえていた物をよこしてきたニャ。



「こ、これは! ”ちゅーちゅー”して食べるやつニャ! 」


「そうです。”ちゅーちゅー”して食べるやつですニャ」


 これを出されてはどうしようもニャい。



「わかったニャ~。その事件、この”名探偵メガネ”にお任せを! だニャ」


「お願いするんだニャ~」


「……でもニャ、くつしたよ」


「ん? なんだニャ? 」


「助手は仕事を持ってくるもんだニャ。その助手からの仕事をしてどうするんだニャ」


「ごめんだニャ、せんぱい。でも、オイラせんぱいしか頼れる猫いニャくて……」


「……まぁ、僕は報酬ほうしゅうさえ貰えればいいんだけどニャ」


 こんな風に言われたら僕が一肌脱ぐしかないニャ。


 とりあえず、くつしたの寝床に向かおうかニャ。



「ここです。ここがオイラの寝床だニャ」



 人間の倉庫だろうかニャ。埃が凄く、もう長い事使われてはいニャいのだろう。



「どこにあったんだニャ? そのおもちゃは」


「ここだニャ」


 確かにおもちゃのあとがあるニャ。


 その辺りを良く見てみると小さな足跡があるニャ。


 埃が多くしっかりと足跡が残っているニャ。



「この足跡、お前のじゃないニャ」


「本当だニャ! オイラのよりずっと小さいニャ」


 足跡を辿たどっていくと外のダンボールに続いていたニャ。


 ダンボールの中には子猫が一匹眠っていて、大事そうにネズミのおもちゃを抱いていたニャ。



「あっ! オイラのネズミのおもちゃだニャ! 」


 その大声にビックリして、眠っていた子猫が起きたニャ。


 

「それ返すニャ! オイラのだニャ! 」


 子猫は悪い事をしたのはわかっていたみたいだニャ。



「ごめんニャさい」


「まったくだニャ! 親猫はどこだニャ? 文句言ってやるだニャ! 」


「ごめんニャさい。お父さんは、いニャいんですニャ。お母さんは忙しくて、あんまり一緒にいないんだニャ」


 頭を下げながら、一生懸命いっしょうけんめいあやまる子猫。



「だから、ボク寂しくてお母さんを探してうろうろしてたんだニャ」


 くつしたの寝床とここは近いニャ。十分子猫でも歩ける距離だニャ。



「そんな時に、このネズミのおもちゃを見つけて持って来ちゃったんだニャ」


 犯猫はんねこ自供じきょうも取れたニャ。これで一件落着いっけんらくちゃく! だニャ。



「本当に、ごめんニャさい」


 何度も頭を下げる子猫。


 ……



「……よく見たらオイラのネズミのおもちゃじゃないニャ」


「「ニャ? 」」


 くつしたが変な事を言い出したニャ。



「オイラのネズミのおもちゃは、ここにキズがあるんだニャ」


 そう言って、背中のとこを指したニャ。



「でも、このネズミのおもちゃにはキズが無いニャ」


「じゃあ……」


「これは君のだニャ」


「本当! じゃあボク、このネズミさんと一緒に居ていいのニャ? 」


「だからオイラのじゃないニャ。それは君の好きにすればいいニャ」


「うん! ありがとうニャ! 」


 うれしそうにネズミのおもちゃをいている子猫の元をはなれる僕たち。



「いいのかニャ? 」


「きっとあのネズミのおもちゃも、オイラと一緒にいるより幸せだニャ」


「……そうかニャ」


 少しだけさびしそうなくつしたと一緒に、川沿いの土手に戻ったニャ。



「ありがとうだニャ、せんぱい。これ約束やくそく報酬ほうしゅうだニャ」


 事件が解決かいけつして、報酬ほうしゅうだった”ちゅーちゅー”するやつを受け取る。



「ああ、確かにニャ」


 受け取った”ちゅーちゅー”するやつを、さっそく食べるニャ!


 はぁ~、うまいニャ~。本当に、うまいニャ~。


 でも……。


 ……半分食べて、くつしたに返したニャ。



「ん? ニャんだ? せんぱい」


「くつしたよ。お前は僕の助手だニャ。助手とは報酬ほうしゅうを”半分こ”するものニャ」


「……いいのかニャ? 」


「何度も言わないニャ」


「ありがとうだニャ! せんぱい! 」


 くつしたがうまそうに”ちゅーちゅー”するやつを食べているニャ。


 本当に、うまそうに食べているニャ。


 本当に……。


 ……ゴクリ。……もうちょっとだけ食べておけば良かったかニャ?


 

 こうして今回の事件も、この”名探偵メガネ”が解決かいけつしたんだニャ。


 ……


 今日も僕は川沿いの土手で日向ぼっこをしているニャ。



「今日も平和だニャ~」


 うとうとしていると「バタバタ」と足音が聞こえてきた。



「せんぱ~い! 大変だニャ~! 」


 はぁ~、また事件か。


 でも、どんな事件もこの”名探偵メガネ”にお任せを! だニャ。

 

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野良猫名探偵「メガネ」とその助手「くつした」 磧沙木 希信 @sekisakikisin

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