【KAC20248】ダブルレインボー。

猫野 尻尾

第1話:本当の虹の色。

西岡 悠馬にしおか ゆうま


それが俺の名前・・・で現在高校一年生、男子。

俺にはクラスの中に、ひとり思いを寄せてる女子がいるんだ。


俺は成績もそこそこ優秀だし運動もそこそここなす。

性格だって悪くはないって自分で思ってる。

女子には優しいほう。


今の高校に入学してしばらくしてのこと、俺はひとりの同級生のことが、

とっても気になりじはじめた。

もちろん、相手は女子・・・女子高生。


その子の名前は「生田 麗華」《いくた れいか》」


彼女は落ちこぼれ・・・成績ドンケツ。

運動音痴・・・だから、どこででもよくずっこける。

この間なんか、両方のスネとデコの両側にカットバンを貼っていた。


そんなポンコツな彼女の唯一いいとこがあるとしたら、それは彼女の美貌・・・。

それだけはクラスの女子の中でダントツでトップクラス。

でも本人は、あまり自覚はないよう。


そんなこと気にもしていない無頓着な性格も俺が彼女を好きになった要因の

ひとつでもある。

とにかく性格がいいんだ。


俺はそんな麗華のことが気になってしょうがなくなっていた。

だからいつでも遠くから彼女を見ていることが至福の時間だった。


麗華とは普段は普通に同級生としては話しだってする。


だけどなるべく意識しないようにして・・・意識すると急に彼女の目が

見れなくなるし、萎縮しちゃってしゃべれなくなる。

胸がドキドキして汗が出て・・・アドレナリンの放出半端ない。


とくに彼女は目が悪いのか、俺と話をする時、やたら近い。


俺のこと好きなのかって勘違いしてしまいそうになる。

そのままキスしてやろうかって思ってしまう。


目が悪いならなんでコンタクトかめがねをかけないんだろうって思った。

それに足元がちゃんと見えないと危ないだろ?

めがねかけたら、可愛いと思うんだけどな。


まあ、どっちにしても、めがねかけようが、かけなかろうが俺は麗華の

ことが好きだけどな。


だけど俺は自分の想いを麗華に告げられないまま日々悶々としていた。


それがだ・・・まあ晴天の霹靂とはこのこと。


ある日のこと麗華の一番仲のいい早希さきが俺のところに来て麗華が

「話があるから屋上に来てほしい」


って言ってるからって言ってきた。


麗華が?・・・俺に?何の用?・・・俺、彼女になにかしたかな・・・。

俺が屋上へ行くと先に麗華が来てて俺に気づくと笑顔でペコってお辞儀した。


すこし離れたところから見る彼女の立ち姿。


風になびく長い髪・・・眩しすぎる笑顔・・・揺れるスカート。

俺の目の中で切り取った彼女の完璧なベストショット。


「ごめんね、西岡君・・・呼び出したりして」


「ああ・・・別にいいよ・・・なに?俺に用って」


俺は平静を装って、内心はドキドキだった。

なんせ思いを寄せてる麗華からの呼び出し・・・どんな用事だろうと

それだけでテンション上がるってもんだろうう。


「あの〜あのね・・・そのね・・・私みたいな落ちこぼれでよかったらだけど」

「付き合ってほしいんだけど・・・」


「は?」


あまり唐突な彼女の言葉に、俺はしばらく返事ができなかった。

ずっと思ってた子からの、思わぬ告白。


うそだろ、そんなこと?

俺は突然起こった予期せぬ出来事に戸惑ってなにも言わず黙ってると


「やっぱり・・・ダメかな・・・そうだよね」

「私みたいなヘタレでポンコツが西岡君見たいな優秀な男子の彼女って・・・」

「ごめんね・・・迷惑だよね・・・」


「あ〜もう告るんじゃなかった」


彼女は勇気を出して俺に自分の思いを告ったんだろう。

告ったあとで、後悔してる彼女の様子が伺えた。


「西岡君、今のことは忘れて・・・・・・ごめんね」

「・・・じゃ〜ね、忘れてね」


そう言って彼女は顔を真っ赤にして立ち去ろうとした。


「あ・・・待てよ・・・」

「俺に告っといて、なにひとり自虐的になってるんだよ」

「俺、まだなにも言ってないだろ?」


「だって・・・」


「いや、まさかの展開に、すこし戸惑っただけだよ」

「迷惑なんかじゃないし・・・むしろ嬉しいし・・・」


「えっ?」


「実は俺、麗華のこと、ずっと前から好きだったんだ」

「でも気持ちを告る勇気がなかなかでなくて・・・」

「きっとこのまま片思いで終わるんだろうなって思ってたんだ」


「だからさ、好きな子からのまさかの告白だろ・・・固まるよな」


「え、それじゃ」


「もちろん、おっけ〜に決まってるよ・・・俺の方からお願いしたいくらいだよ」


「ほんとに?・・・からかってないよね」


「なんでよ・・・こんなチャンス・・・逃したら俺、バカチンコだよ」


「バカチンコ?」


麗華はクスって笑った。


「俺の方こそ、付き合ってだよ」


「そうなんだ・・・ああ、よかった〜」

「あ、そうだ、ちょっと待ってね」


そう言うと麗華は自分のバッグから何かを取り出した。


「なに・・・?・・・めがね?」


「買ったの・・・どうかな?似合ってる?」


そう言って麗華は「めがね」をかけた。


「似合ってる・・・俺は前から麗華はめがね似合うって思ってた」


「ありがとう・・・西岡君をちゃんと見たかったから・・・」


彼女は満面の笑顔を浮かべた・・・そして俺の後ろを指差して言った。


「あ、虹」


俺が後ろを振り向くと、そこに綺麗な虹がでていた。

しかもダブルレインボー。


「虹って、こんなに綺麗だったんだ・・・忘れてた」


めがねのおかげで本当の虹の色が見れてよかったね、麗華。


幸せのダブルレインボー。

それが俺と麗華の恋のはじまり。

俺の明日に新たな目標と生きがいが生まれた・・・そして麗華にも。


おしまい。

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