見にくい
Rotten flower
第1話
「なんか、こう、最近見にくいんだよね。」
彼女は目を細めながら言った。比較的痩せている彼女は寒がっていた。
「視力落ちてきたのかも、眼鏡買わないと。」
特に視力なんか気にしないほど良かったのに、天変地異か何かだろうか。
「まぁ、有り得なくはないし。眼鏡買うの手伝おうか。」
「大丈夫、店員さんに声かけれるし。」
「眼鏡はアクセサリーだよ。見える見えないの実用性の部分じゃなくて、こう、似合っているかどうかというか。」
「そういうの私よくわからないんだ。そういうことなら頼むよ。」
次の日曜日、約束した時間ピッタリに彼女は来た。人混みを掻き分ける姿、見えていない状態ではかなり怖いだろう。
「おはよう。」
「おはよう。メッセージ送ったのに既読無視は酷くないか。」
「どっちかが送ったにしろ人生は有限なんだし、最終的には既読無視で終わるよね。既読したってわかるならそれで良くない。」
僕はなんとも言えなかった。
彼女の手を引きながら目的地を目指す。田舎にあるショッピングセンターはどうしていつも混んでいるのだろうか。
「やっぱり外見とか気にならないや。」
迷いながらもよくわかっていない顔、短くは言えないそれは彼女で見るのはほぼ毎日と言っていいほどである。
「試着できるらしいし何個かかけてみたらどう。」
「分かった。」
様々な色のフレームを見た。どれも似合っていて、甲乙つけがたい。
「どれがいいかな。」
「黒色のやつがいいかな。」
何も考えずに適当なものを言って、無責任だろう。
「じゃあフレームは黒にするね。ここからは多分一人で行けるけど。君は…帰る雰囲気では無いね。」
「居ておこうと思ってるんだけど…なにか不都合でもあるの。」
「別にないけどさ。」
それからというもの眼鏡作りは順調に終わった。
「終わったのにまだ帰らないつもりなんだ。」
「朝から集まったのにこんな時間に帰るなんて勿体無くない。」
「そうは思わないかな。」
「特に来て良かったことも無いし、眼鏡をかけても社会は醜かったよ。外見が求められて内見は二の次、さっきの道にはつっ立ってた女の子が多かった。こんな田舎なのにね。もう人間社会って外見なのかなって思うとそんなものに縛られない昔に行きたいや。」
見にくい Rotten flower @Rotten_flower
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