15 洞窟のなかの三悪党

 狼人間ウルフル、コウモリ人間バティスタ、オークのブータの三悪党は、村人たちに追われ、森の洞窟に逃げ込んだ。


 それから三日がたった――



(今回は実験的に、コント形式でお送りいたします……モンスターたちのあほうな会話に、しばしおつきあいくださいませ……)



ウルフル「イテテ。でっけえ石が直撃した頭が、まだ痛みやがる」


バティスタ「大丈夫っスか? 兄貴?」


ウルフル「おう、心配すんな。俺様はディスアスター軍いち、打たれ強い男よ」


バティスタ「ちなみに俺は、ディスアスター軍一、打たれ弱い男です」


ウルフル「そういう報告はいらん」


バティスタ「いや、戦力に数えられると困るんで……その点は強調しておきやす」


ウルフル「まあ、そう言うな。お前には、魔法の才能がある」


バティスタ「ふぇっふぇっふぇ、そう言ってもらえると、助かりやす」


ウルフル「なに、俺たちは強い。必ずシュメールの首を取り、魔皇帝陛下に献上する。そして俺はディスアスター帝国の、国軍総司令になるのだ、げへへっ」


バティスタ「そうなったら、ペールネールちゃんは捕まえて、あの子はどうも鳥の精霊のようですから、俺たちのペットにしちゃいましょう」


ウルフル「ペットだと? ペットなんてお前、毎日ちゃんとエサあげれるのか?」


バティスタ「任せてください!」


ウルフル「自分の食事さえ忘れることがある、ずぼらなお前が……」


バティスタ「大丈夫ですって! かぁいいペールネールちゃんを飼うとなりゃぁ、がんばってやりますって!」


ウルフル「お前、典型的な、最初だけがんばるタイプだよね」


バティスタ「いやいやいや、そんなことないですって! ……ねえ、お父ちゃん、鳥の精霊、飼ってもいいでしょう?」


ウルフル「ちゃんと毎日世話するならな」


バティスタ「やったーーー!」


ウルフル「……って、おい、お前、キャラ変わってるぞ! 俺たちゃ、極悪非道の三人組のはず」


バティスタ「ふぇっふぇっふぇ、そうでやした。あ、そうだ! この洞窟に潜伏している間に、ペールネールちゃんファンクラブの、会員証、作ったんスよ」


 (バティスタは文房具を、いつも袋に入れて持ち歩いている)


ウルフル「おおっ、お前って、たまに器用だよね」


バティスタ「任せてください。常闇とこやみの領域でも、地下アイドルのおっかけやってましたからね。はい、兄貴の分も作りましたよ」


 (バティスタ、ウルフルに会員証を渡す)


ウルフル「おい、なんで俺が会員ナンバー2で、お前が1なんだよ!?」


バティスタ「兄貴、怒んないでくださいよ! しょうがないな、じゃ、兄貴はナンバーゼロにしますか」


ウルフル「ゼロか……。ゼロってちょっとかっこいいよね」


バティスタ「じゃ、ゼロに書き換えて、と、ハイ、兄貴」


  (会員ナンバー1は死守! ふぇっふぇっふぇ、兄貴をダマすのは、チョロいな~)


ウルフル「え? なんか言った?」


バティスタ「いえ、なにも」


ウルフル「会員証もできて、これで俺たちは名実ともに、ペールネールちゃんのファンになったわけだ」


バティスタ「そう、ペールネールちゃんの知らないところで、ぐふふ!」


ウルフル「ペールネールちゃん、イヤがるだろうな~。お前、ほんと、ワルだよね~! 他人が嫌がることを、熟知してる」


バティスタ「ふぇっふぇっふぇ、兄貴にゃあ、かないませんよ!」


ウルフル「お! お前、持ちあげてくれるじゃねぇか! 兄貴、嬉しい!」(涙)




ブータ「ブー! (腹減ったぁ!)」


ウルフル「お、もうそんな時間か、狩りに出かけるか」


バティスタ「へい!」


ウルフル「俺、時々思うんだ。俺たちって、こいつ(ブータ)を養ってやってるだけじゃないのかって……」


バティスタ「そうですよね。寝てばっかで、何もしないわりには、大食いですし……」


ウルフル「うん……」


バティスタ「いっそのこと、こいつ、トンカツにして食っちまいますか!」


ウルフル「(驚愕!) な、なんて残酷な! お前、本気で言ってるのか!?」


バティスタ「ふぇっふぇっふぇ」



ウルフル「お、俺は……お前のようなワルには、なれねえかもしれねぇ。だが、考えてもみろよ、バティスタ」


バティスタ「?」


ウルフル「三人で常闇とこやみ田舎いなかから一緒に出てきて、数ヶ月。こんな毒々しい光に満ちた異国の果てで、たった三人……三人きりの仲間じゃねぇか。なあ、バティスタよ。義兄弟三人、力を合わせ、いたわりあって、仲よくやっていこうじゃねぇかよぉ……」


 涙ながらの説教が身にしみたのか、バティスタも翼で目元を覆う。


「うぅっっ、兄貴ぃぃぃ~~! 俺が間違ってました~~!」


 今日も三匹の魔物は、異国の地で涙しながら抱き合うのだった……





✱.˚‧º‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧º·˚.✱


 ペールネールのファンクラブが発足!?


 次回、話はシュメールたちに戻ります。

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