フェアリーアイドル!!

石川 明日香

🍴第1話🍴 ウチ達は、妖精!

 この作品は姉、石川 円花と書いています。

 作 石川 明日香/石川 円花

――――――――――――――――――――――――――――――――

 ウチ、クラム!

 本名はクラム・パレット・ワールド。

 今年度、中学一年生になる三つ子の次女。

 明るい性格ってよく言われる。

 あこがれているのは地球!

 海があって、大きくて、何と言ってもきれいなんだよね~。


「お~い。入学式でしょ、起きなさいっ」


 台所の方からかん高くて、スピーカーを使っているかのような爆音が聞こえて来た。

 せっかく、うとうと夢見心地だったのに~!


「シャイニー、うるさ~い」


 ウチは正論で言い返した。

 えへんっ。

 ウチを注意したのは、ウチの姉、長女のシャイニー・トゥインクル・ワールド。

 いちいちウチのことを注意してくるんだ。

 でも、ちょっとは頼りになる…かな?

 三つ編みをくるってとめた髪は、羊みたい。

 羽の黄色が透き通っていて、キレイで羨ましい。

 おおっと、おぬしは気づいたかい?

 頭の中のウチはひげを生やし、虫眼鏡を持って、探偵気取り。

 羽が生えている、そう、ウチ達は……妖精なんだ!

 そして、ウチ達が住んでいる星は、地球ではなく、〚妖精世界フェアリーワールド〛。

 地球の四分の一サイズ、海は無い。

 また、妖精は、一人一人違う魔法を持っているんだ。

 ウチは『色を変える』っていう魔法を使える。

 どうだ、エッヘンすごいでしょう!!

 シャイニーは…また後で紹介するよ!

 お楽しみに~。

 楽しみは残しておこう!!

 とか言いつつ、本当は紹介するのがめんどくさいからなんだけど…。

 えへへっ。 


「お~い」


 あ、この声は……。


「朝ごはんできたよ~。今日はハナが作ったよ」


 え、ホント!?

 声の主は、ウチの妹で、末っ子の、ハナ・ガーデン・ワールド。

 パッチリとした目が愛らしくて、ちょっぴり恥ずかしがり屋。

 『植物を操る』っていう魔法を持っている。


「ごめん、遅れた~」


 バタバタとウチは駆けていく。

 テーブルに置いてある朝食を見て、ウチは思わず言った。


「朝ごはん、少なくない!?」


 たったの、ご飯十杯、卵焼き三十切れ、味噌汁二十杯!!


「はあ――クラムの胃袋はどうなっているの。こんなの普通の妖精に比べて食べ過ぎ!!私達はアルバイトで稼いでいるんだから、我慢しなさいっ。私達、貧乏なんだから!!」 

「うっ…」 


 それは言われると、言い返せない。

 シャイニーの目線が怖すぎる~。

 カニに金棒だよっ。(※作者からの注意:鬼に金棒です。)

 あれ?

 カニに金棒じゃ、怖くなくない?

 ま、いっか。


「でも、た、食べる子は育つっていうし!」

「クラムは食べ過ぎなのっ。逆に健康を害するわよ」


 ううっ、ムキ~!!!


「ま、まあ、お姉ちゃん達、早く食べようよ…。今日、入学式だよ…」


 ハナに言われて思いだす。

 そうだった、入学式!

 ウチ達の両親は来ないけど……。

 小学一年生の頃に、チーンってお葬式したもん。

 親族は、叔母さんがいるけれど、もう中学生ということで、三人で暮らそうってことになったんだ!


「それじゃあ」

「「「いただきます」」」


 モグモグ、モグ……。

 十分もすれば、うちのお皿は、すっから、かーんっ。

 2人とも、食べるの遅いな~。

 ウチの二十分の一くらいの量なのに、まだ、全然食べ終わっていない。

 食器を洗って、制服に着替えた。

 食器を洗ってあげるなんて、優しすぎる!

 後で、お菓子の増量をシャイニーにお願いしよう。

 ウチ、賢い!

 羽を出せるように、背中の所に穴が開いているのが、妖精世界フェアリーワールドの日常。

 この制服、紺色が大人っぽくてすっごく可愛い!

 鏡を見ながら、白いウチの髪をとかす。

 今日のウチ、イケてるっ!

 ローファーを履いて、行ってきますっ!

 あ、ハナとシャイニーのこと、忘れてた。

 ごめん、ごめん。

 シャイニーとハナを待って、再び行ってきますっ。

 四月の爽やかな風がウチの髪をなびかせた。

 シャイニーはもう百メートル以上も先。

 その理由は……魔法!

 シャイニーは『光の速さで走る』って魔法を持っている。

 毎朝魔法が使えるか、チェックしているんだ!

 風に乗って桜が舞う。

 ウチ達の入学をお祝いしてくれているみたい。

 そんなことを思っていたら、校門はすぐそこっ!

 さあ、中学校生活が始まるよ~!


「早く行こうよ――!」


 ハナも珍しくはしゃいでいる。

 う~、楽しみ過ぎて、今日眠れちゃった~。

 クラス分けが貼ってある掲示板へ行くと……ウチ達は違うクラス。

 毎年恒例の三つ子あるある!

 シャイニーは一組、ハナは二組、ウチは三組。

 うーん。

 ウチとシャイニーは良いとして、ちょっぴり…ではなく、とっても人見知りのハナは大丈夫かなぁ。


「じゃあねっ」


 真面目なシャイニーは、素早く教室へ行っちゃった。


「え……え…ま………頑張るね……」


 ハナはトボトボ歩いて行く。

 本当に大丈夫なの!?

 ハナの方をチラチラ振り返りながら、ウチは自分の教室がある…はずの方向に向かう。

 角を曲がった瞬間。


――ドーン


 な、何かにぶつかった。

 ちょっと少女漫画みたい!

 ウチは思わずばくちゅうする。

 ふふっ、楽な物だよ。

 キラーンッ。


「すみません」


 ウチが決めポーズをしている最中に、ぶつかった少女がお辞儀をする。

 その少女は、緑色の髪で、眼鏡をかけていて、賢そう!

 すると、胸元のポケットから、生徒手帳がポロリと落ちた。

 そこから名前が見える。

 『ミルキー・プラス・ワイ』

 この子の名前か。

 あ、クラス発表の掲示板に名前が載っていた気がする。

 ということは、クラスメイト!

 ……だと思う。

 急いで生徒手帳を拾う。


「落としたよ!」

「あ、ありがとうございます」


 丁寧な仕草、喋り方。

 友達になりたいなぁ。

 そうだ!


「友達になろう!」

「えぇっ!?」


 眼鏡の奥の瞳が驚いたように、見開かれる。

 ミルキー……さん、びっくりしてる?

 う、ウチ、失敗した!?

 毎回突っ走ってしまうんだよね。


「あ、ごめんね!いきなり」

「あ……いえ、大丈夫です。あの…とても嬉しいです」


 えっ、ほんと?

 ウチはぱっと笑いかける。


「ミルキーちゃんって呼んでいい?」

「あっ……はい!」

「ウチ、クラム・パレット・ワールド。クラムって呼んで!」

「クラムちゃんでも良いですか?」

「もちろんっ!……ウチの素晴らしさが一目見ただけで、分かったのか。見る目があるね~!」

「?」


 こうして、ウチの中学校生活が始まった。

 友達とウチと姉妹で!!

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る