めがね

もし、もじ

「めがね、さがしてくる！」

　そういって、家を飛び出していった子がいます。

　その子は、手紙と帽子を忘れて出かけていきました。

　しばらくしても、戻ってきません。

　どれくらい経（た）ったでしょうか、それはわかりません。

　✶

「め、がね、どこかへ行ってしまったの」

　では、いっしょに　さがしにいきましょう。

　✶

　とんとんとん

　まずはじめに、『も』さんのお家に行きました。

　『め』さんがいなくなってしまったというのです。

　『め』さんに近い『も』さんに、『め』さんの行き先に心当たりはないか聞いてみました。

「しぃらないな」

　『も』さんは、

「もぉー、今、おやつの時間なの。ジャマしないで」

　と、扉を閉めてしまいました。

　『む』さんにも聞いてみました。

　とんとんとん

「なぁに？」

「あのね、『め』さんを……」

「しぃらないなぁ」

　そう言って、『む』さんも扉を閉めてしまいました。

　近くを『ね』さんらしきものが通りました。

「ねぇ！」

　呼び止めてみました。

　けれども、しらーん顔。

　もしかして、『ね』さんには聞こえなかったのでしょうか。

「ね、待って！」

　『ね』さんが向（む）かった方角には、『ぬ』さんのお家がありました。

　とんとんとん

　「……」

　返事はありません。

　もう一度、

　とんとんとん

「んん、ぬぅぅぅ」

　わずかですが、うめき声のようなものが聞こえてきました。

　もしかしたら……

　がちゃり

　扉を開けて見るとそこには、丸（まる）められた『め』さんがいました。

　『ぬ』さんもいました。

　何が起きていたのでしょう？

　なんと、

『ぬ』さんが『め』さんに『ぬ』さんの代わりを頼みたかったというのです。たとえ、１日だけでもいいから。

　きっかけは、

『ぬ』さんが『ね』さんから、

『ね』さんは時々『わ』さんに、『わ』さんは『れ』さんに間違われる

　という話を聞いたこと。

　それならば……と、この企みを思いついたと言います。

　そこで、『ね』さんを探しに来た『め』さんを不意打ちで捕まえて、この企みを実行しようとしたのですって。

　まぁ！

　なんてこと。

　ところで、あとから聞いた話によると、わたしたちが見た『ね』さんは、実は『わ』さんだったらしいですよ。

　ちょうど、その頃『わ』さんの家で『ね』さんと『れ』さんはお昼寝していたらしいのです。

　しかも、『も』さんちでおやつを食べていたのは『し』さんで。わたしたちが会ったのは『も』さんではなく『し』さんだったのかもしれないんですって。

　さらに、『む』さんちには『す』さんが来てきたんですって。

　じゃあ、わたしたちが会ったのは『む』さんではなく『す』さんだったのかしら？

　『め』さんが『ね』さんを探しに行ったのは、『さ』さんと『き』さんが仲良く歩いているのを見て、

　ちょっぴり

　さみしくなったからだとか？

　✶

　ね、みつかってよかったね。

　めがねを探しに行ったお話は、

　めを探すお話になりました。

　✶

　……よく似てても、間違えないで　ね。

　✶