13, ごめんね

 トボトボと調理室から出ようとしたその時だった。


「あ、スティーラ…」


「おっと、お嬢さん!つっかまーえた!」


スティーラはそう言うと亜子の足をちょんと触った。


「ははは…。亜子はここで終わりか。」


スティーラがブイブイとチェーンソーをふかした瞬間、走馬灯が駆け巡った。


----


亜子は昔からちょーっと体が弱くて、いつも病院でひとりぼっち。学校に行っても病気のせいで体調が悪いとすぐママに連絡がいって病院に逆戻り。結局小学校も中学校も全然思うように通えなかった。


でも高校はちゃんと通いたい!ってパパとママを説得してなんとか通えるようになって、めっちゃ嬉しかった。


友だちもできた。


1年生になって初めて話しかけてくれたのが、和泉 恵子ちゃんだった。


とっても優しくて亜子の病気のこともわかってくれて、いつも一緒だった。


でも、華奈美ちゃんが恵子ちゃんに話しかけるようになってから恵子ちゃんは亜子と距離を取るようになっちゃった。


恵子ちゃんと話したいって思っていた時に亜子はまたしばらく入院することになっちゃって、学校に戻ってきた時には恵子ちゃんはすでに亡くなっていた…。


あの時、亜子がちゃんと恵子ちゃんと話していれば、死なずに済んだかもしれない…。


でも亜子は華奈美ちゃんたちに立ち向かう勇気がなかった…。


----


「ごめんね…。恵子ちゃん…。」



ザシュッ!



チェーンソーで思いっきり切りつけられた。


ドサッ…


(亜子…も、そっちに行くから…。会いたいよ…、恵子ちゃん…)


薄れゆく意識の中、スティーラがチェーンソーを引きずっていく姿が見えた。


そしてその顔は恐ろしくも笑っていたのだった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る