ハイテクめがねの使い方

最時

第1話 ARグラス

 昼食を済ませてデスクに戻ると同期のツバサが来た。

 普段掛けないめがねをしてニヤニヤしている。

 もう嫌な予感しかしない。

 私は机に伏せた。


「マナ!

 人の顔を見るなり寝ないでっ」


「何で?」


「何でって、当たり前のマナーだと思うのですが」


「それは人に対するマナーでツバサにはあてはまらないじゃん」


「厳しい、いつからそんなになっちゃったの」


「いつからだろう?

 私も一年は耐えられたと思うんだけどね・・・

 お休みなさい」


「休まないでっ。

 マナにも貸してあげるから」


 めがねを指して顔を近づけてきた。


「もう。

 貸さなくて良いけど、何?」


「やっぱ気になるよね」


「・・・」


「ARグラスを作っちゃいました」


「へー。

 何ができるのですか」


「AR(拡張現実)ってスマホがメインでグラスで使いやすいの意外と無いんだよね」


「ゴーグルみたいなのが多いのかな」


「そう!

 そこで機能を絞って普通のめがねタイプを作ってみました」


「どんな機能?」


「めがねのレンズが有機ELデイスプレーで、フレームにはピンホールカメラがついている。

 そしてブルートゥースでスマホと通信して、グーグルレンズやマップの機能を使うことができます」


「・・・ たまに本当にすごいことするよね」


「いや、こんなのは別にたいしたことじゃないんだよ。

 ある技術を組み合わせただけ。

 ARグラスもずいぶん前からあるアイデアだしね」


「・・・ 筋トークなんかよりはるかに良いと思うけど」


「何か言った?」


「いえ。

 それの商品化を目指すの?」


「マナったら、するわけ無いじゃん」


「・・・ じゃあどうするの?」


「これの一番の特徴は一見普通のめがねと変わらないこと、どこで掛けていても不自然じゃないことなんだよ」


「・・・」


「真価を発揮するのは試験会場」


「ただカンニングじゃん」


「マナったら、カンニングはばれなければカンニングにならないんだよ。

 誰もこんなARグラスがあること知らないからね。

 禁止されるまでは合法なんだよ。

 優れた武器を持つ者が時代を作っていくんだよ」


「何言ってるかわからないけど、試験受けるなら通報するから」


「え~」

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