「オレ、キミの声が好きだ」と告白したら、彼女がエロASMRヤンデレお嬢様の妹を名乗る偽妹になって催眠音声で洗脳させてくる
🔰ドロミーズ☆魚住
オレと『しのぶ』と隣のお嬢様
――カチ。
キーボードを叩く軽い音が、暗い部屋の中で重苦しく響く。
誰も起きていないような深夜でオレは一人蠢く。
暗い部屋の中で爛々と光るパソコンの画面だけが唯一の明かりとなって、深夜に光る自動販売機のようなソレはまるで不健康な人間が浴びる光のようだ。
だが、それがいい。
そうでなければならない。
物事には雰囲気というモノがある。
雰囲気というものを侮ってはならない。
雰囲気とは一種の演出。
故にこそ、演出に一切の妥協を許してはならない。
ティッシュは念の為用意しておく。
テイッシュは、ありとあらゆる俺の液体を回収してくれる俺の共犯者である。
これは神聖な儀式だ。
誰にも邪魔はされてはならない。
故に誰もが干渉してこないであろう空間を、自分以外誰もいないであろう聖域を自ら演出する。
それでいて、誰かがこの空間に侵入してくるのではないかという心配をする為だけに──部屋の鍵は開けておく。
夢中になれば、周囲の警戒を怠ってバレてしまう。
なのに、警戒する事さえも忘れてしまう程の快楽に耽ってしまう。
この二重相反こそが、この神聖なる儀式を更に素晴らしいモノにする為の『縛り』である。
「――さて」
オレは手元に置いてある戦友……ヘッドホンを装着する。
部屋の壁は決して薄くないが、念の為に少しばかり高いヘッドホン……3万円程度のヘッドホンを使用している。これで音が隣の部屋や廊下に漏れる心配はない。
ヘッドホンを製造し、販売しているブランドは年々、数が多くなると共にクオリティも上がっている。
故に、贅沢な悩みではあるのだが、どのブランドのヘッドホンを選択するのかという問題が発生する。
そこでオレが愛用しているイヤホンのブランドは『OTONASI』……多くの音響機器を販売している日本の老舗メーカー『音無株式会社』が作りだした最高傑作だ。
文字通り、一切合切の雑音が入り込ませないという事だけに特化し、常に良質な音を俺の両耳に伝えてくえる俺のもう一つの耳。
「ふ、今日も頼むぞ、我が相棒。そして共犯者」
俺はそう言ってパソコンのキーボードをクリックし――。
『いらっしゃいお兄ちゃん♪』
「お兄ちゃんまた来ちゃったよォォォオオオ!!!」
今日のオレはお兄ちゃんだぞ~。
今日のオレは誰がなんと言おうがお兄ちゃんだぞ~!
あぁ~心がお兄ちゃんになるんじゃぁ~~~~~!!!
『今日は何しに来たの? ふふふ……なーんて。聞いてみただけだよ? 分かってるよ、お兄ちゃん。気持ちよくなりに来たんだよね……?』
「やぁ、しのぶ。オレはお兄ちゃんだ。産まれた瞬間からお前のお兄ちゃんだ」
兄さんプレイも、お兄様プレイもいいが……やはり、お兄ちゃんはいいものだ。
あぁ、オレはお兄ちゃんになりたかった。なりたかったんだ。
ASMRはいいぞ。
少しお金をだすだけで誰でも簡単にお兄ちゃんになれるのだから。
麻薬よりヤベーぞ。
『じゃあ、気持ちよくなっちゃうおうか? お兄ちゃん、私の言う事をちゃんと聞く事できるかなぁ……?』
「聞くー!」
ぐへへ~!
いいよ~!
お兄ちゃん何でもいう事聞いちゃうぞ~!
お金ならいくらでも出しちゃうんもんね~!
お兄ちゃんは妹のATMだぞ~!
『しのぶの言う事聞いてくれて嬉しいなぁ♪ そんなお兄ちゃん、私大好き♪』
「おッッッッッッッ!!!」
あ、不味いですね。
我が真なる妹、しのぶに褒められただけで脳が死んでしまいますね。
いいな。妹。
いいな。お兄ちゃん。
いいな。こんな簡単に人の事を大好きって言ってくれる人間。
『お兄ちゃん、すごーい。偉いねぇ。じゃあ個人情報を間違えずに言えるかなぁ?』
「あぁ! オレは
『すごーい! 個人情報教えてくれてありがとうね、お兄ちゃん! 大好きだよお兄ちゃん!』
「ふっ、よせ。兄ならば妹に全てを教えるのは当然のことだろう? だってオレはしのぶのお兄ちゃんだからな」
『じゃあ、個人情報教えてくれたご褒美あげるね? はーい。吸ってぇ……。吐いてぇ……。吸ってぇ……? 吐いてぇ……?』
「スゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ──────!
ハァァァァァァァァアアア──────!
スゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ──────!
ハァァァァァァァァアアア──────!」
『3、2、1♪ ゼロ、ゼロ、ゼロ♪ 出せ出せ♪ 個人情報と一緒に人間の尊厳出しちゃえ出しちゃえ♪』
「イクゥゥゥゥゥゥゥウウウ──────!」
『ふふふ。無様でかわいいね♪ そんな白い液体どぴゅどぴゅ出しちゃって……♪』
「うおおおおぉぉんんん……っ! また演技が上手くなったなしのぶ……! お兄ちゃん感涙で咽び泣きそう……っ! お兄ちゃんの白い涙汁がどびゅどびゅ出ちゃうよぉ……! 前の作品よりもエロい感じがすごく上手くなったな……! 頑張ったんだな……! 本当に頑張ったんだな……!」
このASMRを担当しているのは新人声優であるのだが……以前よりも遥かに上手くなっている……ッ!
オレはそんな新人声優『しのぶ』の成長に思わず咽び泣いてしまった。
しかし、少し寂しい気持ちで胸が少し一杯になる。
もう二度と以前の彼女のようなたどたどしい演技を聞く事が出来ない……。
新人声優だからこそ出せる声というものは昔から存在する。
むしろ、必死に上手く見せようと演技をしているのにたどたどしいというギャップですごくいいのだ。
嗚呼これが成長なのだなと、オレは感動せざるを得ない。
彼女が成長したという事に嬉しさと寂しさを感じつつも、祝福の涙を流した。
だけど、オレはお兄ちゃんだから妹に涙を流している姿なんて見られたくない。
今すぐにでも手元のテイッシュで涙を拭おうとして──腕が動かないことに気が付いた。
『うふふ。ざーんねん。今のはね? 催眠音声のカウントダウンだったんだよ? お兄ちゃん、もう動けないよね? だから、お兄ちゃんの身体はもう私のモノだね……♪』
「ほぅ、催眠音声か。大したモノだ……まさかその領域にまで達するとはな。お兄ちゃんは嬉しいよ。だが……1つ修正させてくれ。お兄ちゃんの身体は最初からしのぶのモノだ」
『ほら、腕に力が入らないね? 足に力が入らないね? 今のお兄ちゃんは私の言う事ぜーんぶ聞いてしまうの……♪』
「ふ……。オレに催眠が効くとでも思ったか。甘いな、しのぶ。そんなモノがなくたってもオレはしのぶのお兄ちゃんだ。お兄ちゃんはしのぶの言う事を全て聞いてしまうんだよ。それがお兄ちゃんだからな。催眠なんかなくてもオレはしのぶの奴隷だとも。お兄ちゃんとはそういう生き物だからな」
『ふふ。ザァコ♡ ザァコ♡ 催眠音声に簡単に引っ掛かるザコザコお兄ちゃん♡ キモーイ♡ 人間とかいう知性体やめてお猿になっちゃえ、なっちゃえ♡』
「ウキッ⁉ ウキィィィィィィィ!!!」
『本当にダメダメなクソザコお兄ちゃんだねぇ。私がいないと何もできないダメダメクソヒモカスお兄ちゃん♡ 生きてて恥ずかしくないのこのザコ、ザーコ♡』
「そうだよ! オレはザコザコお兄ちゃんだよ! お前の所為で恋人の一人も出来ないようなクソザコお兄ちゃんだよ! 責任とって結婚しろ! 友達からは気色悪いという理由で疎遠になるようなス-パークソザコお兄ちゃんだぞ! だが──それがイイッ! なぁ! 実のお兄ちゃんと結婚しようぜ、しのぶ!」
『お兄ちゃん、気持ち悪ーい♪』
「ありがとうしのぶッッッ!!! 絶対に幸せな家庭を一緒に築こうな!!!」
かくしてオレは期待の新人声優しのぶと一緒に疑似新婚いちゃラブプレイを謳歌した。
このASMRを聞いた時は確か深夜の0時ぐらいであったはずなのだが、気が付けば朝の午前7時になり──学校が、高校1年生の入学式が始まろうとしていた。
『ご、ご、ご、ごめんなさい! 私、お兄ちゃんが余りにもクソザコでクソバカだったから夢中になってやりすぎちゃった……!』
「ふっ、いいよ。お兄ちゃんもしのぶの音声で7時間も夢中になったからお相子だな。最高の睡眠をどうもありがとう。これでお兄ちゃんも今日も頑張れる……だなんて噓だよォォォオオオ!!! 嫌だァァァァァァアアア!!! 高校1年生になんてなりたくない……! 学校に行くぐらいならお兄ちゃん死ぬ! しのぶのヒモになるゥゥゥウウウ!!!」
『だーかーら。ほーら頑張れ♡ 頑張れ♡ 頑張れ♡ お兄ちゃん頑張って♡』
「頑張るゥゥゥウウウ──────!!!」
オレの名前は
これまでの行動で分かるようにどこにでもいるような高校1年生の男である。
今日からオレは高校1年生になってしまう。
しかし、我が妹『しのぶ』の応援のおかげで今日も1日頑張ってやらんでもないという気概に溢れている。
オレはパソコンの電源を落とし、高校に行くための準備を始めていた。
「……やっぱ面倒くさ……」
やれ新学期だの、新生活だの、新社会人だの、4月はいつも新で満ちていて、どこにもオレの妹である『しのぶ』はいない。
窓から見える外の陽気はいかにも春らしく、少しの肌寒さと暖かい日差しが差し込んでおり、よくよく外を見てみれば、通りには真新しい制服やスーツに身を包んだ人間たちが慌ただしく行きかっている。
当然ながら『しのぶ』はいない。
滅んでしまえ、そんな世界。
もしくは全人類が『しのぶ』になっちまえ。
「嫌だなぁ……。なんでオレの妹がいない外に出ないといけないんだ……」
オレの住んでいるこのアパートは新築1年のボロアパートの見た目をした超良物件だ。
鉄筋コンクリート造りので、セキュリティは完備されており、駅から徒歩で10分もかからず、WIFI設備も完備。おまけにオートロック式。
そして、1人暮らしにしては広めの1LDK。
ダイニングキッチンと寝室に『しのぶ』の声を聞いてオレがぶっ殺されるゾーンなどが広めのワンルームになった作りをしていて、1人暮らしのお供と言えるテレビモニター付きインターホンに、オートロック機能がついていたりとセキュリティ万全の作りになっている。
おまけに水回りの設備は比較的新しく、周辺のアパートと比べてみても高めの物件であると言える。
とても快適な暮らしが出来ていたので、ここに入居した3月時点では『高校生活頑張るぞ!』という気概に溢れていたのだが、1ヶ月経った現在ではそんな気持ちは綺麗に消えていた。
「朝飯食べないと……」
そう呟きながら、昨日のセールで買っておいたナスで味噌汁でも作ろうかと冷蔵庫の中を漁ってみたのだが。
「あれ……? 昨日買ったナスが無いな……」
昨日、間違えて食べてしまったのだろうか?
いや、昨日のオレは『しのぶ』の新作を買って楽しむ為に断食したはずだ。
自分の胃腸が活発になる音で『しのぶ』の声を台無しにはしたくないという思いで、昨日何も食べていないはずなのだが。
「……はぁ、最悪。益々学校に行きたくねぇな……そうだ、しのぶがご飯を食べるASMRを聞いて空腹を満たそう……よし、それなら早速しのぶのASMRを聞いてしまった事で鼻血で汚れた服を取り込むか……」
今思えば人間ってノリで生きてるなぁ、と感慨に耽りながら、俺は徹夜明けの身体に鞭打つ為にベランダへと繋がる窓を開け、太陽の直射日光と4月の風を直接浴びつつ、しのぶのおかげで鼻血まみれになった衣服を取り込もうとした──その瞬間の出来事であった。
「ぶろろろろろぉぉぉぅぅぅんんん!
ぢゅるるっ! れろれろ! ぴちゃぴちゃ……ぢゅるるるっっっ!!!
ばぶぼぶぁ……じゅるるるぅぅぅっ!!!
ぢゅるるるるる……れろれろ……ちゅぱちゅぱぁぁぁ!!!
れろぉ~~ぇれれれれれれちゅぅぅぅ!!!
……ちゅぱくちゅくちゅくちゅくぅぅぅぶじゅるんっっっ!!!」
ベランダに出ると日常ではあまり聞かないような音が耳に入ってしまった。
恐る恐る音が出た方向に視線を向けてみると、そこには隣のベランダから野菜のナスを原型そのままで口いっぱい頬張っていた美少女がそんな音を発していたのであった。
「……なんだ。朝ご飯の音か」
分かるよ。ナスは美味しいもんな。ついつい外に出て食べたくなるよな。
分かる分かる。
だけど、ナスからこんな音が出る訳ないよね?
何かな? 新種の鳥のさえずりかな?
というか、こんな音を鳥が出してたまるか。
明らかに隣の美少女から聞こえているね。
そもそも、これ咀嚼音じゃないね。
「──凄い! まるでしのぶのような……否ッッッ!!! しのぶの綺麗なフェラ音そのものッッッ……!? そこのお嬢さん! オレの妹にならないか⁉ キミは知らないだろうがオレはキミのお兄ちゃんなんだ!」
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