眼鏡の行方
T◎-BUN
ちょっと肝が冷えた。
幼い頃、子供用のメガネをしている子がいて、目の悪さなんて考えずにただかっこいいなと思った。メガネというものは大人がするものだという子どもながらの勝手な偏見からかもしれない。それにつけてるだけで頭がよく見える最高のアイテムだ。若白髪があると苦労をしてるから頭がいいとか言われたことがあるが、白髪なんかよりも眼鏡がほしかった。
ついに私も眼鏡デビューする時が来た。裸眼でも難なく過ごせるが黒板の文字が読みにくいということで眼科に行って検査して眼鏡屋さんで作ってもらった。眼科の先生からは「スマホの使いすぎですね」と言われたが、それ以前からパソコンを寝ながら使ってたのでスマホだけの原因ではない。ただ右目と左目の視力の差が激し過ぎて笑ってしまった。眼鏡屋さんで選んだのは黒縁に似た眼鏡。漫画などでは黒縁の眼鏡を使用しているキャラがいたし、私も描く時は書きやすいからと黒縁にしていた。ブルーライトカットを入れるために待って、ようやくつけた感想は、「似合ってない」だった。他の眼鏡はどうしても厳しい人のイメージや、色が派手だから浮いてしまうのではという懸念から選ばなかったが、眼鏡は似合わなかった。小学生時代を少女漫画に捧げた私は、眼鏡だと地味って本当なんだなと思った。これが少女漫画なら、眼鏡を外した姿を褒められてコンタクトにする流れだが、コンタクトの怖い話を事前に聞いていた私はコンタクトを選ばなかった。
趣味に仕事にブルーライトを浴びていると、目が疲れてくる。文字が二重に見えることはあったが、スマホを見る距離で画面を廻始めたときは、度が会ってないことを明確に教えてくれた。
だが、私は県外で一人暮らしの身。馴染みの眼鏡屋さんも近くにないところで、私が目をつけたのは、いつも眼鏡洗浄機が店先に置いてある眼鏡屋さんだった。眼科とも提携しているらしく、安心だと思って、眼科に行き、その足で眼鏡を作った。
ブルーライトカットのみならず、レンズまで高いものにして、若干標的にされた感じはあったが、高い買い物をした。当時働いていた職場で気づいてくれたのが嬉しくて買うにあたっての最初からを話すほどテンションが上がっていた。
時がすぎ、私は地元に戻っていた。実家はいいものだと、こたつを出して眼鏡をつけてスマホを見て、うとうとしたから、眼鏡を外して、ちょっと寝て……予想がつくだろう。眼鏡を無くしたのだ。そしてどこだ、どこだと探しているうちに、ベキッと嫌な音を立てて見つかった。フレームと耳にかけるフックを繋げる部分が丁度割れてしまったのだ。どうしたものかと嘆く前に、割とすぐに眼鏡屋さんに行った。初めて眼鏡を作ったところと同じところだ。
どんなのが似合うだろう、と眼鏡の大群を眺めながら、考えていると店員さんは「以前の眼鏡に近いものはこちらですよ」と笑顔でおすすめしてくれた。やはり私は縁のついた黒めの眼鏡というわけらしい。ブルーライトカットをつけてもらって、待って、それからつけた。
目の視力が変わっていたので、新しい眼鏡が合うとは思うものの、前の眼鏡の終わり方があんなものだったので、差はわからなかった。仕事用の眼鏡を家で使っているから、家用の眼鏡を買わないとなと考えている最中、また眼鏡を紛失した。
爪先立ちしてゆっくり立ち上がって探すと、先ほど座っていたところに眼鏡はあった。二度目がなくて本当に良かったと思った。
眼鏡の行方 T◎-BUN @toubun812
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