僕とメガネと高校デビュー

すみはし

僕とメガネと高校デビュー

小学生からメガネデビュー、そのまま激ダサ銀縁丸メガネと共に中学へ入学し、呼ばれるあだ名はメガネザル。

高校ではさすがにこれは恥ずかしいとコンタクト…は怖そうなので、メガネを新調。

派手目のゴツめのメガネに惹かれつつも、文系メガネ男子になるべく黒縁をチョイス。


そして来る入学式当日…に、メガネを忘れた。

正確に言うと激ダサ縁丸メガネの方をかけてきてしまった。

見慣れた自分の顔すぎてうっかりしていた。

ということで、メガネは封印することにしたのだ。


「えーと、はじめまして。よろしくね」

横の女の子が声をかけてくる。

「よろしく、こちらこそ」


明るめの茶色のロングヘアとピンク系の少し長いネイルが目立つが、地味めな銀色のメガネをかけているようだ。

視力が悪いながらなんとなく見た目の割に顔は素朴な感じがする。

細かい顔まで凝視するのは失礼だと思ったので、目線をそらす。


せっかく隣の席なので仲良くなりたい気持ちはあり、横目にチラチラと目をやる。

ずっと俯いており、しきりに髪を気にしているようだった。

髪とネイルが浮いているように感じるのは彼女も高校デビュー組だからなのかもしれない。


メガネを忘れたが故に黒板に書かれている明日のスケジュールがよく分からないので、何とか目を細めて解読する。

それでもなお読めない部分もあり、隣の彼女にあそこにはなんと書いてあるのかと声をかけると、表情は深くまで見えなかったが、かなり驚いたように「えっ……と」と言いながらやや俯き気味のままノートをすっと出してくれた。


と、こんなことがあって、入学式は無事終了。

うちの高校は入学式の日はクラス分け、席の決定、明日のオリエンテーションの説明程度しかすることは無いらしく、自己紹介などは明日行うようだった。

あまり人と触れ合うことなく終了できたことに安心する。


次の日、さすがに気をつけて念入りに自分が黒縁メガネをかけていることを確認して家を出る。

今日は大丈夫。

僕の高校デビューは今日から始まる。


登校して自分の席に着く。

隣の席には明るい茶髪のメガネの子…ではなく明るい茶髪のギャルメイクの子が座っていた。

髪はゆるりと巻かれており、メガネをかけている様子は無い。

俯いている様子もなくクラスメイトと既にニコニコと笑っている。

えっ、昨日の女の子は…?


「おはよ! 隣の席の、名前わかんないけど、よろしくね!」


隣の席の名前も知らない女の子が声をかけてきた。

茶色い髪と、きらきらとしたピンクのネイル(昨日は長さしか見ていなかったが)は昨日と変わらない。


「あれ、君って昨日この席だった…?」

「あー、えーっと」


率直な疑問をぶつけると女の子は気まずそうに答える。


「あたし、昨日は寝坊してコンタクト忘れちゃってぇ…昔から使ってる地味メガネを慌ててかけて出てきて、化粧も髪の毛巻くのも出来なかったからさぁ、恥ずかしくて…」

「なるほどね、通りでよく俯いてたりするから不思議だったんだけど、そういうことだったんだ」


「そ、でもキミもなんか違くない?」

「僕は昨日メガネ忘れちゃって、あんまり見えてなかったんだよね」

「あはは、ウケる。だからキミ目付き悪かったんだ! 睨まれてんのかと思ったよ〜! 今日は目、大きいね」


女の子は口元を手で隠して笑う。


「キミ、メガネかけてる方がカッコイイね」

「君の方こそ、今日の方がー…えーと…」

「カワイイっしょ?」

「…そうだね」


僕たちの高校デビューは今日から始まるようだ。

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僕とメガネと高校デビュー すみはし @sumikko0020

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