スクールストラテジー

天然無自覚難聴系主人公

第一話:最初の戦略

「いいか、お前は今日から小学一年生として学校に通うことになる。これは我々からしたら少々リスクを伴うが潜入ミッションだとでも思いなさい。決して、ミスをしないように」


「分かりました。父上」


 小学生になる子には思えないほどしっかりとした返事には自信が満ち溢れていた。そして礼をし、静かに部屋を出て、ランドセルを背負い、黄色い校帽をかぶる。


***


 現代社会において、裏稼業も今や大変な時代となってしまった。仕事をしながらの技術の継承、さらには小学校に行くのもリスクがあるため学問までも親が教えなければならない。


 そこで、裏の方々にも少しは楽にしてもらわなければいけないと思い、建てられた小中一貫校それこそがここジンフィーネ小中一慣校である。


 一般人は元よりスパイ、殺し屋、詐欺師、情報屋から人外まで幅広い裏稼業の方々が特に何も受けることなく入学ができる。さらに色々と裏の方々にも優しい保証がされているため、最も裏から人気がある学校である。


 そんなジンフィーネ校に今年も小学一年生が入る。


***


 ──椅子、机に盗聴器などの反応は無い。トラップなども発見はできないことから、この席は安全だろう。


一クラスに15人の少数クラス。殺すのも少なくて助かる。今日からはこのクラスの人と勉学を励み教養を身に着け、立派なスパイとなる。


 彼、深闇ふかやみ 狂夜きょうやは小学一年生である。スパイ一家の名家である、深闇家の長男として生まれた彼の技術はもはやプロに匹敵するとも言われる人物である。ついた名は『次世代の最強スパイ』


「皆さん、ご入学おめでとおうございます。私はこのクラスの担任の……」


 山下やました 咲紀さき。年齢は27歳、教員歴三年、この学校は二年目となった去年は二年生の担任。


 住所は確か……〇△区 □×町5-17-11 ×〇マンション405号室。父のくれた情報にはそう記載があったが……実際のところはどうだかな。


「……では、体育館に移動しましょう。」


***


 ──教員も裏の人間がいるな。


 小学生の体育教師にしては、でかくムキムキな人だ。あの教師はこちらを窺っているのがバレバレだ。ざっとここの教員の実力は、三流程度だろう。


 完全にこの学校のレベルを低く見ているが、この学校のレベルはそんなものではない。


三流など居ない。より腕の立つ者は己の印象操作など容易い事だ。教員としては最初に裏であると言うことを認識させることが目的である。まだまだ小学生1年生である狂夜は実践的な教えは少ない。そのため実力を履き違えたのである。


 ……裏の教員がいるとなると動きづらくなるな。少し慎重に動く必要があるか。

 入学式も終わり、教室に戻る。そして辺りを窺う。


 隣の人の名前なんだったけな……


 小学一年生とは思えないほど大人びている。姿勢も良く、深く座りすぎていないため、すぐに立ち上がることが可能な態勢、


 素晴らしい! とても意識が高い。が、どこか挙動不審だな……先ほどまでとは違い何故か手がもじもじしている。トイレなのか?



 ──隣の人がめっちゃ見てくる!! 恥ずかしい……どうしてそんなに見てくるの!? もしや、裏の人? 殺っちゃって良い人なのかな? で、でも大人しくしてろってパパが言ってたし……!


 彼女、血染ちぞめ 殺姫さつきは小学一年生である。殺し屋一家の名門である、血染家の長女として生まれた彼女は『真紅のドレスの殺し姫』など二つ名を持つほど有名である。


 他人の視線を気取るのもお手の物である。


 この視線のうまさ一般人には出来ないでしょうね。きっと裏の人なんでしょう……


 よし、この子にしよう。学校とは集団で過ごすもの。友達選びはとても重要なものとなる。


最初の会話、それは一番相手の事を読み取る瞬間。ここで優しく、『大丈夫ですか?』と言えば相手からの好感も高いだろう。


 両方試行錯誤しているうちに先生の話は進み、授業の終わりを示すチャイムがなる。


「──あの、大丈夫ですか?先程震えていたように見えるのですが」


「へっ!あっ、はい。大丈夫で、です。」



 向こうから話しかけていた〜!? まさかサシでのタイマンとか!? いや、それを思わせての暗殺!? 殺らないと! 殺らないと!!


 ──クックック……この性格からして、僕の味方にするのは簡単だろう。勝ったな、まずは友達(仮!)一人!


「あっ!ごめんなさい。突然話しかけてしまい。僕は深闇 狂夜これからよろしくね」


「え、えっと……血染 殺姫です。よろしく、お願いします。」


「私は情野じょうの 報花ほうかよろしくね!」


 ……なんか、入ってきたな。えっと、情野さんか、目立った履歴もないな。一般家庭育ちだ。


資料上ではな。紙切れ一枚どうにでもすることは出来る。お父さんもあまり時間がなかったと言っていた。全部を信用はしない。


……その身なり、ちょっとした髪留めなんかも情報となる。それは一般流通はしていない物だ。ただの一般人ではないな。


「えっと、これからよろしく!凶年くんと殺美ちゃん!」


 ……殺すか。


 狂夜の父の名前は凶年である。偶然一部の、ごく少数しか知らない世界で活躍する重要機密人物である父の名前と間違えた。偶然? そんなものは通用しない。


だがここでは小学一年生。父の仕事上どう繋がりがあるか分からない。

こいつも重要人物の場合父の仕事の邪魔をする事にも繋がる。だがしかし、ここで無視することもできない暴露。どうすれば……


「……えっと、殺姫です。殺美はママの名前です。」


「えっ! ごめん……名前とか覚えるの苦手でね~ほんとごめん!」


「いやいや、良いんです! そんなに責めてませんから。それにしても良く知ってましたね、PTAってやつで知ったんですか?」


 いや、有り得ない。PTAはまだ行っていない。名前を知る機会など……もしや凄腕の同じスパイ!? いやいや、さすがにそんな訳……


「いや~私、情報や~~~~そういうのを~~~~集めるのが好きって言うかなんて言うか……ね?」


 情野 報花。世界一の情報屋の娘彼の父に任せればターゲットの髪の毛の本数まで知れべ手くれるとか……勿論彼女自身も優れている。洞察力はピカイチで好きな子も簡単にばれる。


 こいつ絶対情報屋の子だろ!? 前に父が言っていたぞ『アイツ娘に弱いんだよな~色々話さないといいなだが……』って!!


というかこいつもはや情報屋って言ってるじゃねーかよ!? コイツを他のグループに入れてはならない! この国が滅ぶ!


 などと一人で緊急会議をしていたら話は進んでいた。


「──やっぱり!?そう思うよね~気合うじゃん~」


「ありがと」


 二人だけで盛り上がり始めたしまった。友達小グループを形成しようと思ったら。取り残されてしまっている


「オッケー! 君は記念すべき小学校の友達一号だ!!」


「えっ! あ、ありがとうございます」


 同性同士何かあるのだろう。興味のある系統が全く違う。なんだプリっとキュアーズって。だがまずいぞ……このままではボッチなるものになってしまう!


「もちろん、全然話についていけてない狂夜君もね! 二号だ!」


「あ、ありがとう」


 何とか非常事態は免れたか。


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