悪役令嬢は死亡遊戯に挑む
ガビ
プロローグ 悪役令嬢の決意
[エミリー・サンドレア]
返り血で真っ赤なドレスがさらに赤くなっていく。
パーティで他の女よりも目立つために選んだこのドレスは、このゲームに参加するよりもずっと前から私の勝負服だった。
服は、その人間の生き様を表す。
綺麗な服装の者はエレガントに。
みすぼらしい服装の者は惨めな人生を歩む。
そう。私は今まで綺麗であろうと努力してきた。全ては、アレの隣に並ぶのが許される女になるために。
しかし、その椅子はスキンケアさえも適当に済ませる芋女に奪われた。
ダサい黒髪、貧相な体型、教養の無いおつむ。
どう考えても私の方が努力してきたはずだ。
それなのに、アレは芋女を選んだ。
なんで?
なんで?なんで?
なんで?なんで?なんで?
なんで?なんで?なんで?なんで?
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
「なんでだよォぉォォぉォぉォぉぉぉォォォォぉぉォぉォォォォぉぉォぉォぉォぉォぉぉォぉォォォぉぉォォォぉぉォォォォォぉぉォぉぉ!!!!!!」
動かない女を滅多刺しにして、更に返り血を浴びる。生温かい液体が茶色に染めた長髪にまで届く。その度にあの世界での憤りを思い出す。
アレと私は許嫁だった。
分かるか? 許嫁だ。互いの家が認め合った仲である許嫁だ。
アレと私は、物心ついた頃から結ばれる契約にあった。運命なんて不確定なものではない。権力者達が私達を夫婦にすることで国の安泰を図ろうと、外堀を埋めてくれた結果、絶対的な繋がりができていた。
それを、婚約破棄だと?
アレは頭が弱いから、自分がとんでもないことを言っていることに気づいていないのだろう。
問題点など腐るほどあるが、私が最も懸念したのは家族のことだ。
私のお父様は、アレの父親である国王と旧知の仲だ。
お父様は、息子と似て頭に若干の問題を抱えている国王に全ての実権を握らせるのは危険だと考えた。
不必要に国王をヨイショする連中は、自分のことしか考えていない愚か者だ。組織の中にはトップに物申せるNo.2が不可欠だ。
だから、酒の席で私とアレを許嫁にして、切っても切れない関係を作った。
全ては、国のために。
もちろん、お父様は私にも相談してくれた。私も国が大切だったし、アレの見た目だけは好きだったので了承した。
時には嫌われ役を買って出る、私達親子を邪魔に思う連中もいたが、私達は負けなかった。
あの日までは。
一時の感情で国を傾かせることをしでかした、アレと芋女が手を繋いでいる光景を睨んでいたら、シャンデリアが落下してきて私は圧死した。
何ともあっけない最期だった。
あんな図ったようなタイミングで支える部品が壊れた? 出来過ぎだろう。
誰かが、事故に見せかけて私を殺したんだ。
そいつを見つけ出して、私の味わった100倍の苦しみを与えて殺してやる。
そのためには、このゲームに勝つ必要がある。
どこかの金と暇を持て余した変態が作ったであろう、この馬鹿馬鹿しいゲームに全力で挑む。
「‥‥‥はぁ、ハァ、はァ」
刺す部位が無くなってから、私はようやくナイフから力を抜く。
もはや人間の形を成していない、その物体を見る。
そこで罪の意識に苛まれるような良心は、あの世界の命と共に失っていた。
さて、あと何人のプレイヤーが残っているだろう。
どんな奴であれ、全員殺す。
正ヒロインとやらに生まれ変わるのは私だ。
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