第1章 ラコラッタの召喚師
第1話 召喚師の少年①
「うおおおっーー騙したなああああああぁあああ……スバルううう!」
さり気無く騙された事を主張しつつも、このボク――
雲一つない空の元、城下街の商店街の暖かく照らされた栄えるリンゴを横目に小道を駆け抜ける。
ボクは今年で十五を迎えるであろう普通の天界人だ。
特徴と言えば、銀色の髪に左目が少し隠れている事くらいだろう。
空を飛ぶことも出来なければ魔法もろくに使うことは出来ない。
……あと、長距離を走るのはあまり得意ではない。
「あと少しで商店街を抜けるわ……そうしたら」
「私たちの魔法で丸焼きにして差し上げましょう♪」
「一斉射撃!」
「変態コロス」
後ろから声が聞こえる。四人だ。
ボクは少し前まで田舎の里で暮らしていた。
その為、ここでの常識が分からない。
ボクの里は、おつかいを済ませて戻るまでの短時間の間に何者かに滅ぼされていた……。
ボクは見る影も無くなった里に居た怪しいスーツの男に話しかけたら、魔法学校に転入する話をされて、なぜか魔法学校に叩き込まれただけの田舎暮らしの少年である。
当然のように友人がいなく、ヤケになって首に「友人になって く れ な い か な?」と書いたボードをぶら下げて待機していた所、黒髪にちょこんと乗る王冠、白のモコモコのマント、パンパンに膨らんだベージュの縦縞模様のズボンが特徴的な、まるで王様みたいな(隠れデブとの噂も流れている)同級生、
「魔法使いたるもの友人を作るにも度胸が必要だ」と、友人の作り方についての講義を三十分程聞かされた後に寝具の収められている”布団倉庫”と言う部屋で「枕を取って来てくれたら友人になってやる」と言われた。
想像以上に簡単な条件で呆気にとられ「本当はスバルも友人が欲しかったのか」とか「意外とイイヤツかもな」とか思っていて、三日月を三つくっつけて作ったような邪悪な笑みを疑いもしなかった。
――だが、ドアを開けて戦慄した。
そこでは二組の女子生徒のカップルが熱く抱き合ってキスをしていたのである。
そして、ピョンピョン跳ねて長髪のお姉さまとキスをしていた子供らしい緑髪の女の子がボクの顔を見て泣き始めたのだ……。
その瞬間、他の三人に親の
そして泣きじゃくていた少女が叫んだ。
「あいつ殺してえええええええええ」
何かの冗談かと思っていたが、害虫を潰すような勢いで振り出された箒の柄の部分が頬をかすめると、ボクは血の気が引いて逃げ出した。
その時、スバルは三日月を三つくっつけて作ったような邪悪な笑みで「逃げ切れるといいね」なんて言ったのだ。
絶対に許さない。
しかし、非情にも四人の女はスバルには目をくれずにボクを追いかけて来た。
そして今、体力が底を尽き商店街からも抜け出てしまった。
広大な大陸、エンジェスの中央に位置する城下街とその外界を隔てる巨大な外壁に阻まれていてもう逃げ場はない。
外壁の間際は車が通っておりこれ以上逃げられない……と言うよりもこれ以上追いかけっこをするのは洒落にならない。
ボクは足を止めた。それを見て四人の少女は一斉に構える。
「覚悟は出来たかしら?ド変態」
「私たちの
「射撃用意!」
「うわああああああああああん」
……ボクは自分が体力の限界に達しているのに最初に泣き出した一番か弱そうな緑髪の少女が普通について来ていたことに若干のショックを受けた……。
四人の少女の手の平の上ではゴウゴウと火球が生成されてる。
一番簡単な魔法。
もう後が無い。
最後に弁明を試みる。
「ボクは枕が欲しかっただけなんだ……ここに来たばかりでどうして追われているかも分からないんだ……」
すると泣きじゃくっていた少女が自分の手をマイクを持つアナウンサーの様にして、長髪のお姉さまに向け「……と、おっしゃっていますがどうでしょう?」と問いかけた。
手を向けられているお姉さまはキメ顔で言い放つ。
「間違えなく嘘だ、ああっ……可憐でかわいい天使よ……簡単な推理だ、あの部屋にッ枕などッ無い!」
……えっ!?そもそも枕が無いの!?
「騙したなあああスバルぅうううううう……」
途端、話している間にも膨張を続けていた
投げられた
それ程の重さと爆発力がある。
ボクも唯一、
「空高く大地を照らすシャンデリアガーデンの元に召されなさい」
「くっ……」
轟音が鳴り響く。
付近の地面が揺れる程の爆発が起き、煙が巻きあがる。
煙で周囲が見えないが、一つだけ分かることがある。
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