???

「おかえり」



「……ただいま」


玄関で、叔父である朝倉玲央が俺を迎えていた。

パソコンを持っていて、格好はだらしない。


「本当にノワの時と態度が全然違うね。鍛えた俺もビックリだよ」


「……」


ここはあえて無視をする。

これを相手にするのは面倒かつ疲れるからだ。


部屋に荷物を置き、クローゼットの戸を開くと、タンスの上にある写真立てが視界に入った。

ハンガーをかけ、写真立てを手に取る。



……小さい時の俺と、ブラン。



写真の中と俺とブランは、今と違って普通に笑えている。

……でも、今は笑えない。


気づけば俺は、笑えなくなっていた。

ブランも、ブランの家族からも、あの日を境目に笑顔が消えた。奪われた。

……現に、今のブランも笑ってくれない。


俺はただ、ブランに昔みたいに笑って欲しい。

たった……それだけの願いなんだ。


ブランの笑顔を取り戻すために。

ブランの笑顔を奪ったあの組織を潰すために。



全てが元通りになるまで、俺は怪盗をやり続ける。



だから……ブランを傷つけて、悲しませるやつは許さない。

昨日、泣かせたあいつのことも、俺は絶対に許さない。

……あいつは、そんなやつじゃないって思っていたのに、信じた俺が馬鹿だった。


「……ゆあ、ちゃん」


懐かしい呼び方。

昔は俺のこと……何て呼ばれていたのかすら忘れたくらい、古い記憶なのか。

俺にとってはそうでも、ブランはそうじゃない……けど。



……もう、また昔みたいに、一緒に笑えないの、かな……



「おーい、そろそろ行くぞー」


部屋の外から叔父さんの声にハッとする。

写真立てを大事に置いて、代わりに金色の指輪を手に取った。



……もう、二度とブランに悲しい想いはさせない。



命を懸けてでも、俺はブランを守る。

そう心に誓った。

その意味も込めて、俺は指輪をはめた。



指輪から黒い光が溢れると、俺は怪盗の衣装に身を包んでいた。

バルコニーに出て、家の屋根に着地すると、膝をつき、一度目を閉じる。

マントがばさばさと音を立て、若干邪魔な長い金髪が流れる。



……今からはもう、俺じゃない。

……はもう、今は怪盗だ。



立ち上がると同時に、僕は仮面をつけ、閉じていた目を開いた。

すると、視える世界が一変した。


『ノワ、準備はいい?』


叔父さんの声が聞こえると、心がそわそわして、思わず笑みが溢れた。


「うん。いつでも行けるよ?」


不思議と声色と話し方も変わった。

仮面の力ってすごいや。


『なら、目的地に行くぞ』


「ああ!」


……まだ、僕にはやることが残っている。

僕はいつも通り、怪盗として再び動き出したんだ。





――To Be Continued—―

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