陰キャ女勇者（幼馴染）とジョブなしの俺

第16話

「学術都市、だよな？」

「（ｺｸ）」

　空飛ぶ魔物がいるのでどう見てもただの火事ではないな。どうするんだこれ、弓とかなんかあるか！？魔法があるじゃないか！

「エリス、とりあえず魔物を落とそう！」

「え、あ？……うん！」

　まだ陰キャスイッチ入ってないな。よし！

「攻撃魔法、攻撃魔法！」

「ファイアアロー！ウィンド！ウィンド！クロくん？なんで攻撃魔法で攻撃魔法が出るの！？」

「でたからなんでもいい！魔法攻撃！攻撃魔法！」

「……攻撃魔法！攻撃魔法！ホントだ！」

　なんで出るんだろうな？イメージはできてるからか？雷で魔物に落ちる感じで魔法攻撃！攻撃魔法！どっちで唱えても出るな

「クロくん！それいい！攻撃魔法！」

　あっさり再現された、俺より威力があるな。うーん俺の存在意義……。元からないようなもんか。空飛ぶよくわからん魔物を落としているとでかい怪鳥のような魔物が出てきた。

「やるじゃねぇか！」

「勇者だし！」

「そっちのは！」

「…………お付きです」

「……そうか、勇者とお付きか！元々はこの街を落としてお前たちを誘い出す予定だったが話が早いじゃねぇか！魔王軍四天王、空のバルザドスだ！ここで死にな！」

　いきなり四天王！？上に五大老とか三中老とかいて実は下っ端だったりしないか？

「攻撃魔法！」

「攻撃魔法！」

「何だその詠唱は！チッ！頭が回るじゃあねぇか……！！何が来るかわからんから対策が取れん。テンペスト！」

　名前で何となく分かるが嵐のような風をこちらにぶつけるような技だ。防御魔法を解いたら風で刻まれるか飛ばされるか……どっちかな？

「無詠唱にしては大した硬さだな！それとも先に詠唱してたか？」

　唱えなくても発動って考えれば発動はするよな？分解魔法とかもそうだったし……。

「エリス！無詠唱で攻撃する魔法飛ばせるか！？」

「えっ？ええ？家庭魔法みたいなタイプとかならできるけど純粋な攻撃系魔法は私は言わないと大きい威力では発動できない！防御はできるよ！」

「なら攻撃魔法を連発するぞ！」

　得意かどうかか？隕石魔法も俺は詠唱しなくても発動できたよな。パニックになったからとっさに攻撃魔法とか唱えたが……コスパの概念があってそれが悪い？想像力？

　試してみる価値はある！隕石魔法！バルザドスに向かって！

「ふん、この程度の威力なら恐れるほども……ｶﾞｯ！」

　よしっ！隕石魔法は刺さる！エリスはあれ？みたいな顔をしてるが俺を見たらなにかわかったかのように魔法攻撃を連発している。いける！無詠唱でもでかい威力のやつが！

「攻撃魔法（隕石魔法）！攻撃魔法（隕石魔法）！」

「ぐおおおお……この程度で四天王が死ぬか！トリプルテンペスト！」

　防御魔法を貫通したトリプルテンペストが俺とエリスを打つ。さすがは四天王だ、さ一緒から四天王なんていくらなんでも無茶苦茶だよな。立ち上がれないな、折れたかな？エリスも打ち所が悪いのか腕を抑えている。

「防御魔法！攻撃魔法！」

　エリス、頼むぞ！再現してくれ！お前の威力ならいける！俺の隕石魔法でこれだいけるなら……エリスなら……勝てる！

「聖剣召喚！」

　えっ？

「攻撃魔法！」

　エリスが攻撃魔法を唱えると隕石魔法のように空から流れ星のごとく飛来するなにか。それがバルザドスの体に突き刺さりそのまま地面に勢いよく落下した。

　土煙が収まると地面に突き刺さった聖剣らしきものとバルザドスがそこにあった。

「まさか……もう聖剣を持っていたとはな……結界外から周辺を監視させてたはずなんだが、直接中に入ったのか？逃げの一手を打たなかった時点で俺の負けだったんだな……お付きで撹乱して最後の一撃見事だったぜ。俺が最初の脱落とは残念だよ、四天王最弱とか言われちまうわ」

　意外と瀕死そうに見えて喋るな……油断を誘っているのか？

「そんな目で見なくてももう死ぬよ、聖剣で核を傷つけられたら魔族は死ぬんだ、覚えておけよ。人間と違っていろいろ臓器があるわけでもないしな。血を吐きながらゲホゲホ恨み言吐くわけじゃないんだぜ？勇者様は俺とは話してくれんか？」

「う……ううん……話す、よ？」

「戦闘時だけスイッチが入る感じか？まぁ歴代にもいたな。俺強かったか？」

「うん……クロくんがいなければ……勝てなかったと思う……」

「そうか、強かったか。ならいい、それが聞きたかった。剣抜いてくれよ……それで終わりだよ。勇者お前の名前は？後お付きお前も」

「エリス……」

「クロ」

「あばよエリス、クロ。俺はこの戦争から一抜だ、一応お約束で言っておくが後の三人は俺より強いから気をつけな……まぁ実際俺のほうが強いと思うがな。今までの戦いで一番面白かったぜ、今までの常識が通用しなかったしな！空から飛んできた聖剣に刺されて死んだやつは流石にいねぇだろう。もういいぞ抜け……」

　エリスが剣を抜くとバルザドスは砂のように散ってしまった。こうして俺達は大金星を上げたものの俺の足は完全に折れており、エリスもひどい打撲と左腕の骨折をしていたため逃走する魔物の追撃はせず一旦休むことになった。

　なるほど、戦闘中も戦闘後も治癒魔法なんて使う暇ないな、クタクタすぎる。骨は付いたが疲労は抜けないしな。

　あと聖剣なんだよ……起きたら聞かせてもらうぞ。