第12話
とりあえず気絶したエリスをお姫様抱っこで部屋まで連れて行く、これ俺のほうが勇者っぽいよな。さてどうしたものか……閉じてたはずなのに白目をむいてる……これは見せられない。ハンカチでもかけておこう。なんか周りがざわついてるな、まぁ勇者が気絶してましただもんな。
部屋に向かう途中で王弟のハスルグさんが立っていた、もしかして即時に次のパレード?もう俺は右手疲れてますよ、代理で手を振らせるのもちょっと……。
と思っているとエリスを見て狼狽した、なんだ?
「それは、なにか?あ、えーと……なぜ?」
王弟っていろんな人間と化かし合い騙し合いを繰り広げるほどの人でしょ?何をそこまで狼狽してるんだろう?
「パレードで人の山、川?群れ?を見て気絶しました、代わりにエリスの手を使って振らせました」
「他人に手を振らせる魔法ですか?使い道があったとは思いませんでした……」
「あるんですかその魔法!?教えて下さい!王都のパレードでは私の右手が持ちません!」
「ご自分で勇者様の手を動かしていたのですか!?失礼ながら他人に手を振らせる魔法は聞いたことがあるだけで私は存じません、必要だと思わなかったもので」
でしょうね、王族がこれ使えるって場面ないでしょ。会議とかで使わせる?魔法封じとかあるからやっぱ意味なさそう。会議で洗脳魔法とか使うやついるかも知れないじゃん。洗脳魔法覚えたいね、あるよな。
「それよりその……」
「ああ……大丈夫ですよ、ちょっと気絶してる乙女の顔を見せられないだけでして。ちゃんと生きてますよ」
「いえ、そちらではなく……」
「?」
勇者の沽券に関わる的なやつかな?そう言われるとまずいけどパレードで気絶した時点でもうないからそこは諦めてほしいんですけど。
「えー……10歳になったのでそのように……その……女性をそのように……持ち上げるのは控えたほうがよろしいかと……もちろん、今回は他に方法がなかったとは思いますが……」
「なにか問題でも?」
「問題……あるのかはわかりませんが……」
歯切れが悪いな、法に触れるなにか?いやまさかなぁ……ないよね?
「なにかあるのですか?」
「えぇと……普通は婚姻関係にあるものがする運び方なので……婚約でもかまいませんが……」
「以後気をつけます」
危ねぇ……危うく既成事実が生まれるところだった……。もう生まれたか?うんまぁ顔はいいよ、体つきは……まだわかんないけど、ちょっと夫婦生活を営むには問題が多すぎるんじゃないかなエリスは。
「……違うのですか?」
「はい」
「……そうでしたか、それでは王都のパレードなのですが……」
「いつ頃でしょうか?」
「いつでも大丈夫です、準備は進めておりますのでお好きな時に」
「とりあえずエリスが起きたら聞きますね」
「王都にはいつ頃?今でもかまいませんが」
「それも起きてから聞こうかと……」
「わかりました。それでは私は別の部屋で待機しておりますので」
お姫様抱っこをしたエリスを抱えて俺は途方に暮れた。とりあえずエリスは部屋に寝かして食事を摂ることにした。もう疲れたよ。王都のことは考えたくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます