第2話

 5歳の時に本当に唐突に前世の記憶が蘇った。異世界転生したことは今の知識と合わせても間違いはないだろう、魔物もいる、どうやら魔王もいるらしい。神託で勇者が生まれたら魔王を倒しに行くとか……これは、そのための異世界転生じゃないか!?


 俺が生まれ育ったのは小さい農村だ、親父も兵士をやっていたことがある程度で、実は騎士爵や村長だったりはしないようだ。

つまり生粋の農家だそうだ、成り上がるには難しい位置だろうが勇者になるのなら問題はない。魔法も教師が必要な感じではないらしく母から簡単な魔法を習った、家庭用だがまぁ応用は何にでもきくだろう、そのための前世の知識よ。

使えば精度を増すはず……寝る前に魔力を全部使えば強くなるかもしれない。剣は……地道にやるしかないな……。


 そうと決まれば話は早い。俺は親父に剣を習い、母にさらに魔法を習い、村民からいろんな知識を学ぶことにした、罠の作り方、魔物の戦い方、後……畑の手伝い。

 神託までの5年、成長しておくに越したことはないからね。


「クロ、悪いけど薪割っといて」

「はーい!」


魔法の精度が上がった実感も魔力が強くなった気が全くしないけど……頑張るぞ!




 そんな日々を過ごしていると、何処かから子連れ一家が引っ越してきた。どうやら街の方から来たらしい。娘はエリスと言うそうだ、なんでも娘がここに来たがっていたから引っ越してきたらしい。俺は前世の経験分があるし村では子どもたちのリーダーみたいになっていたので一緒に遊ぼうと誘ったのだが


「え、あ、あの……人が多いのは……ちょっと……」


 まぁ、こんな村でもいないわけではないな、そういうタイプは……。それに引っ越してきたばっかただし。


「クロ君とだけなら……」


 ん?名前名乗ったっけ?


「いいよ、じゃあ遊ぼうか」


 その日は夕方まで2人で遊んだ、山で山菜を取って近くの川で魚を釣ってまた明日合う約束をした。そしてそれから大体毎日遊んだ、時たまに彼女がいないときには他のやつとも遊んだが。基本的にエリスは家の前でじっと待ってるのだ。そしてまた山やら川やらにいきたまに出る魔物をエリスを庇って倒すのだった。そうこうしてるうちに他の子供とも交流ができてきたのだが相変わらずエリスはこんな感じでザ・陰キャって感じだった。




「あ、あの……クロ君……」

「ん?どうしたの?」

「どうして、クロ君は……そんなに……鍛えてるの?」


 まさか俺は勇者になることが決まっているんだとはいえない、異世界転生だぞ?これで勇者じゃなかったら俺は何になるんだ?モブか?王都の学院通って攻略キャラとか多分無理だぞ?金銭的にいけないし……冒険者はなろうと思えば誰でもなれるしな。


「大切なものを守るためかな」

「大切な……?」

「魔物とか……魔王とか……危ないやつからみんなを守りたいんだ」


 まぁそれっぽいことはいえたんじゃないかな?まぁ考えたらこの年齢なら勇者になる!でも良かった気がするけど……まぁ今更だな。


「じゃあ……クロ君は誰が守ってくれるの……?」

「えっ?…………わかんないなぁ……」

「じゃあ!わた、私が……守ってあげる!」

「そうか、ありがとうな」


 普通逆なんだけどな、でも……正直ちょっと嬉しいな。そもそもエリスってなんかやってるのかな?魔法も剣も見たことがないけど。こころなしかウキウキしてるようなエリスを眺めながら強かったらパーティーに入ってほしいんだけどなぁと思った。でも無理だろうなぁ……。




 そんなこんなで10歳になり神託を受けるため街へ向かった。前まで住んでた街に戻る割にエリスは緊張していた。俺とエリスと2人の両親しかいないんだけどな……親の前ではやっぱ違うのかね?それにしても子供は俺が最年長だったんだなあの村……俺達の他に10歳が誰もいかないなんてね。


 街についたらエリスは手を引いて案内する!とあちらこちらへ連れ回してくれた。武器屋、書店、美味しかったお店、思い出のスポット、はたから見ればデートそのものだな。なかなか楽しかった、やはり街はいろんな物があるんだな。

明日は待ちに待ち続けた神託の日、そこで俺は勇者になるんだ、そこから俺の異世界生活の真の始まりが……!




「クロ君!わ……私が、勇者です、勇者になりました……よ?」

「…………うん、おめでとう」


 過去の思い出が現代に繋がってしまったな……。うん、現実だな……。そうだよな、転生しただけだもんな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る