第15話 甘いデザート
今日の夕飯は”
キムチ鍋、ちゃんこ鍋とか、具や味付けを決めるのではなく、冷蔵庫の余った食材とか、野菜の切れ端などを入れてポン酢で頂く。
これを、ヤミツキになるを引っかけて”闇鍋”と呼んでいる。
「ポン酢、最強かよ」
あっという間に土鍋が空っぽになる。
冷蔵庫の整理も出来るし、調理も簡便で食物繊維もたっぷり取れる。
おまけに洗い物も楽なので、一石三鳥くらいのご利益がある。
ようやく肌寒くなってきたので、鍋の出番が増えてきた。
お昼寝も出来るようにと買い替えたソファに足を投げ出してカイが座る。
トレーナーの模様かと思っていたら、よく見ると模様ではなくエノキだった。
早食いなのにおしゃべりしながら食べるので、よくこぼす。
ジェスチャーで胸元を指さすと、気が付いてエノキをゴミ箱に捨てた。
「ねぇ、下の名前で呼んでいい?アレンジ考えてみた」
「言ってみてよ」
「ゆりっち」
「何それ、恥ずかしいんですけど~」
「いいじゃん、おれのことはカイでいいから」
「それ、二人っきりの時だけだからね、守ってよ」
「じゃOKってことで」
メチャクチャこそばゆいんですけど。
いつ考えた?いつから構想を練ってたんだ。
可愛い過ぎるんですけど~。
「それと、今日のデザートはゆりっちがいい」
ウキウキ気分が一変した。
「・・・」
「嫌われると思って、ずーーーーーっと我慢してたけど、もう無理です、
限界でーーーす」
重い空気に気圧されてお調子者っぽく言ったが、場が和むことはなかった。
「・・・」
「僕は男として見てもらえないのかなぁ、、、」
「そんなことない、嫌われると思ってるのは私のほうだよ。そういうことになったら、私のこと嫌いになるよ。やだよ、そんなの」
「好きな人を抱きたいって思うの、自然なことでしょ。僕はゆりっちが大好きで、ゆりっちも僕のことを好きなら、気持ちは一緒でしょ」
「・・・5年くらいご無沙汰だし、おばさんだし、、、」
泣きそうだった。自信がなくて、何かを失うのが怖くて。
「来て、ここに来て」
カイは自分が座ってるソファの横を手で軽く叩いた。
でも金縛りのように動けなかった。
「しょうがないなぁ」
身を硬くしている私の前に来て、ちょっと顔を覗き込むと、
唇をそっと重ねてきた。
唇が離れると、おでことおでこをくっけて小さく息を吐いた。
そのまま背中に腕を回し、ギュっと抱きしめられた。
こんなにがっしりしてたっけ、と思いながら顔をうずめた。
「あったかいでしょ」
「うん・・・」
「二人なら安心するでしょ」
「うん」
「こうやって、ずっと一緒にいようね」
「うん」
また、お預けになっちゃったね。
甘いデザートはまた今度<レベル98>
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