私とメガネと

桔梗 浬

メガネは顔の一部?

 子どもの頃から目が悪かった浬さん。


 社会人になって「いざ! 社会人デビュー」と意気込んでコンタクトレンズにするも…、先端恐怖症でコンタクトをはめた後、取り出すのに指を突っ込まなければならない恐怖に勝てず、メガネ生活に逆戻り。


 いや…それは言い訳で、「お前はメガネ目だな」と同期の男子に言われたことが大きいのである。


「君、アラレちゃんみたいだね」


 何度となく、上司のおじさまたちに言われる浬さん。

 ストレートの黒髪に、黒縁の大きなメガネ、キューピーのような体型。それが若かりしき頃の浬さんの特徴でございます。


 さて時は過ぎ、つい先日のこと。


 スマホ老眼の浬さん。目が疲れてメガネを外し電車の中でウトウト。そして事故は起きたのです。


「あ、私降ります!」


 乗り換えの駅で立ち上がり、慌てて降車しようとしたその瞬間! バリっ、メキっ。嫌な感触が右足に。


 あぁ〜なんと言うことでしょう。メガネが、メガネが。


 大破したメガネを拾い、電車を降りると…、メガネのフレームは壊れ、片方レンズが紛失しているじゃなりませんか!?


 もう、目の前はぼやけて何もかもが美しく見えます。きっとGが歩いていても気づかない!


 浬さん、仕方がないので壊れたメガネをかけてみました。


「…」


 クラクラします。片方しかレンズが入っていないメガネは、最悪です!

 これは罰ゲームなのか!?


 その日一日、メガネのない状態で過ごした浬さん。誰が誰だかわからないけど、とりあえずにっこり笑って「おはよーございます!」と言っておきました(それでいいのか? 社会人)。


 そんな日に限って夜は遠出の飲み会。


「コンタクトレンズにしたの?」


 の質問に、何度となく「メガネ壊しました、いえ、踏みつけてしまいました」と説明を。あ〜、私のメガネ。かわいそうなメガネ。私の体重に耐え切れなかったメガネ。私の日常を照らしてくれていたメガネ。


 そんな壊れたメガネを袋に入れての帰り道。私はJRのとある駅で、綺麗なスタイルの髪の長い人が、誰かを待っているのか壁に寄りかかって立っているのに出くわしました。


 その人は髪をクルッと綺麗に巻いていて(カツラかも)、胸の開いた黒っぽい服を着ていました。短いスカートからは、細い長い足が二本。その足は多分ガーターベルトと網タイツ。お胸はプリンプリン。


 女優さんかしら? なんて思った浬さん。興味が湧くじゃないですか〜。顔が見たくて見えなくて、どんどん近寄って…いました。


「何? なんか用?」


 低い声が聞こえます。


 もうちょっと近づいてお顔を拝見すると、なんと!! あぁ〜なんと言うことでしょう。


「ご、ごめんなさい。なんでもないです」


 すごく綺麗な、お姉さま。ガン見しちゃってごめんなさい。


 やっぱり、メガネって大事なのです。

 

 お後がよろしいようで…。



 END

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私とメガネと 桔梗 浬 @hareruya0126

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