EP01-02・現実世界での目的
§ § § §
私はこの世界に、現実世界に来た目的を思い出してみる。
WODFを救う事は大きすぎて漠然としていたけど、WODFプレイヤーである
「ねぇ、クレオ。
「え? 今度は?? 天照大和?……なんだい? その……チュウニ……じゃなかった。ハンドルネームみたいな……」
「私、その人を探しに来たんだけど……」
「えっと……知らないけど……WODFの人?」
「そう。WODFのトッププレイヤーの一人ね。最近その人がログインしないために、アチラの世界のバランスが崩れる予測になっているの……」
「……フーン」
クレオは高度な人工知能である私が考え込んでいる中、私の質問とは全く違う話題を振ってきた。
「……なぁ、ミサキ。さっきのなんか消えるやつ、もう一度やってみてよ……」
「え? ミサキ……私の名前か……呼ばれ慣れないわね……アギーにしておいて……」
「……アギー……お願い」
「良いわよ」
私は先ほど部屋が「ゴミだらけ」と言われていたのを思い出し、この部屋にあるゴミと思わしきものを片っ端から『ストレージ』に入れていく。家具以外は全部かしら? あ、たまに中身が入っているものは別でスタックしてくれる仕様の様ね。「飲みかけのモンス……エナジードリンク」って出てるわ。
「……まじかよ……まじなのか。マジでマジなのか?」
クレオは「ゴミ掃除」を見て何か変な顔をしているなぁ……私は人探しをしたいのに何でゴミ掃除させられたんだろ……私はあちらの世界の平和を、仲間のAI達を守るためにも
「あ、検索すればいいんだ……」
「? 検索??」
「『検索ウィンドウ』・オープンっと……
「……なんも見えないぞ? え!! 画面が浮いてる?? あれ? なにこれ?」
クレオは私の前後を行ったり来たりして『検索ウィンドウ』を物珍しそうに見ていた。プレイヤー側からしか見えないのは常識じゃないのかしら? そんなことを思いながら私は検索結果を待つ。
「ん? ……該当なし?」
「……このウィンドウ……UIで人を探せるのか?」
「そのはずなんだけど、文字間違いをしていないはずなんだけど……」
高度な人工知能の私が入力ミスをするとは思えない。記憶違いのはずも無いし……どうなってるんだろ?
「……試しに、カクタ クレオ……ってカタカナで打ってみて?」
「ん。別にいいけど……」
私は「カクタ クレオ」と入力して検索してみる。あちらの世界ではカタカナを利用していなかったので微妙に入力がしにくかった。
しばらく待つと検索結果の該当が表示されて二人に絞られる。とりあえずこの子の年齢に近いカクタクレオを選択すると、ワールドマップに座標が表示され、私の近くにカクタクレオが表示される。年齢から住所、病歴など色々なものが表示されていた。
「検索がおかしいわけではなさそうね……」
「すげぇ……これ……個人情報どうなってんだ……俺、やっぱり……今……夢……見てるのか??」
クレオは相変わらず大げさに驚く。この世界にはインターネットがあり、そこで色々な情報にアクセスして調べることができるのはすでに学習している。彼は知らないのだろうか? 彼はインターネットが使えないくらい階級が低いのかな? ミサキの記憶を見てもそんなはずはないんだけど…… 私は再び
「……なぁ、多分だけど、「Oniyasha」で打ってみてくれない?」
「オニヤシャ?」
「ちょっと待って、スペル書く……」
クレオが紙を探すが、紙はこの部屋に無かった様で手持ちの情報端末に文字を入力してこちらに見せてくる。
これが噂に聞く……情報端末!
「それがスマホね! すごい! これでインターネットが使えるのね!」
「え?? あ……うん。なんか色々とずれてる気がしてきた……」
私のいるWODFの電脳空間では以前に規制が入り、インターネットとの接続が限定的になってしまった。プレイヤー……というより「クラッカー」達の標的になり色々と大変な事になったらしい。あとは18禁の何やらのせい……とも聞いているが、マスターAIはあまり詳細まで解説してくれなかった。
私の目の前にはWODFでは禁止されて見ることのできない「インターネット」を自在に操作できる端末がある。そのことに興奮を隠せなかった。
変な表情のクレオに促されて表示された文字を入力して検索をすると……検索結果は出なかった。
「……どうしてかしら?」
「多分、その
「え!?」
私は慌てて鑑定ウィンドウを出す。
すると確かにカクタクレオ WODF プレイヤー名 Oniyasha と出ていた。
「そんな……」
高度な人工知能の私は直ぐに頭を切り替えた。
「クレオ!
「え? あ、わかった。もう少し声小さく……なんか声がいつもよりでけぇな……」
クレオは素早い指裁きでGoogleで検索をしてくれる……あれがググるのGoogleね! 最初にプレイヤーにその言葉を使われたときは意味が分からなかったわ! Googleで検索って言ってくれればいいのに。
「……プレイヤー名では出るね。だけど、レベルとかスキルがえぐいな……うは、これ日本三大ギルドのギルドマスターじゃん……すごいな……この短期間で……引きこもりじゃないのか? これ……」
「……その検索ではそれ以上の情報は出てこないの?」
「SNSでは出てくるけど……本名とか現実のことは書かないタイプの人みたいだなぁ……」
困った。簡単に検索をしてすぐにたどり着けると思っていた。どうしよう……
「さすがに運営に聞いてみても……個人情報出してくれるとは思えないけど……もしかしてネットをハックとかできたりする?」
クレオが私に期待の目を向ける。物凄く輝いていて目が綺麗だ。
って、そんな事はさすがにできない。運営……それは私たちWODFの人工知能にとってはクリエーター様だ。人間が言うところの神ね。逆らえるはずもないし違法行為などAIに許されていないのでできないわ。
「……できないよ。インターネットにはアクセス出来ないの……」
「そうか……それじゃ……この話は終わりだね。んで、その消したやつ……どこいったの? 空き缶とか??」
クレオは私が困っている事を無視して、先ほどのストレージの話ばっかりするようになっていた。
私は面倒になったので、先ほど彼に「ゴミ」と言われたものを『自動配置』を使用して部屋の片隅にまとめて出した。
お? 空き缶って積めるのね。知らなかったわ。凹凸がきっちりと噛み合う仕様なのね。
「すげぇ……空き缶がピラミッドみたいに……これって操作できるの? って、あれ?」
私はストレージから新たな「ゴミ」を出して積むと、人工知能の一生で経験したことのない、得体のしれないモノに包まれて意識が暗闇へと落ちて行った。
§ § § §
クレオは寸分たがわず積まれた空き缶を見て感動していた。振り返るとすでにミサキは眠りに落ちていた。
「……寝ちゃったのか……大丈夫か……」
彼は、彼女に毛布を掛けてあげると玄関の方から人が入ってくる音がする。
「あれ? 男物の靴?」
「あ、お邪魔してます!」
「あら! クレオ君。いらっしゃい。あれミサキは?」
「なんか寝ちゃって……」
ミサキの母親はしばらくの間を置いて慌てだす。困ったような恥ずかしいような素振りだった。
「……えっと……その……いつの間に……」
「違いますよ! あ、さっき倒れてたんで、ちょっと様子見を……」
「え? 倒れた?」
「ええ、それでですね……おそらくちょっと精神が……いや、変な事に……」
クレオは要点をかいつまんで母親に説明をする。心配になった母親はミサキの事を見に行く。
(凄かったな……これが夢じゃなければ……金儲けしまくれるじゃん! すごい!)
クレオはさっき起きたことが夢でないことを願いながら岐路についた。
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